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大学・大学院・教育・研究のあれこれ

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#研究

研究室紹介(2):製造技術,人工知能,医療・ヘルスケア

研究室紹介のつづき.主な研究内容について述べる. 産業界の課題を解決するここまでに述べてきたような思考やフレームワークを用いて,私自身はデータ活用を推進してきた.ここでは,研究成果の一部を紹介する. 製剤関連では,第一三共株式会社と共同で実施してきた一連の研究がある.最初に取り組んだのは,プロセス解析工学(PAT)の研究開発である.私がこの分野に入り込んだ当初,あちこちの国際会議で,ポテトチップスの写真を見せられ,なんと自虐的な集団なのだろうと思った.共同研究では,近赤外

研究室紹介(3):システム工学思考で課題を解決する

研究室紹介のつづき.これが最後. スーパー安納いもプロジェクトを推進する医療だけでなく,農業分野にもシステム工学的アプローチを展開している.対象としている農産物は極めて限定的で,種子島産の安納いもである.サツマイモの一種である安納いもは,ねっとりとした食感と強い甘味が特徴で,焼き芋や天ぷらにすると美味しく,スナック菓子や惣菜パンにも使われており,全国的に人気である.しかし,現状の抜き取り検査による品質保証は十分な水準にはなく,競合する新品種も次々に現れていることから,生産農

研究室紹介(1):課題解決型の応用研究を志す

京都大学大学院情報学研究科にある研究室(ヒューマンシステム論分野)の紹介をしてみる.研究室の公式ウェブサイトをまったく更新していないのだけれども,ある学会から研究室紹介記事を書くようにとの依頼があって,意を決して書いたので,その原稿を編集した内容をここに残しておくことにする. 課題解決型の応用研究を志す私が大学院修士課程に在学していたとき,橋本伊織先生(当時の教授)から「加納君,基礎研究の対極は応用研究か?」と尋ねられた.私は「そりゃそうでしょ」と思った. 研究には基礎研

「大規模言語モデルは新たな知能か」の前に,LLMの凄さの秘密を問いたい

ChatGPTが世界を変えた,そして変え続けているのは確かだろう.あの流暢な文章生成能力,間違えながらも何にでも回答する能力,他のサービスと連携することで際限なく拡張できる能力など,とんでもなく凄まじい. 昨日(2023/7/21),私が企画担当の1人であった某研究会で,国立情報研究所所長(京都大学教授)の黒橋先生に大規模言語モデルの現状,仕組み,将来について講演していただいた.講演後の質疑応答とその後の討論会では,黒橋先生が質問攻めにあわれていた.皆,とても強い興味を持っ

「バッタを倒しにアフリカへ」に研究の醍醐味を感じるー最高だった

無茶苦茶面白かった.以前から気になっていた本だが,ようやく読んだ.本の裏には,ホントは「バッタに喰われにアフリカへ」とある.確かに喰われに行ってたわ.その願望は残念ながら成就しなかったようだが...いや,これぞ白眉研究者だな.京大も良い仕事(研究者として雇用して研究費を出す)をしたものだ. 昆虫学者になりたくて,しかもバッタが大好きで,単身モーリタニアに乗り込んでサバクトビバッタの研究に打ち込む著者の前野ウルド浩太郎氏.誰々の子孫という意味を持つウルドというミドルネームは,

「大学は何処へ 未来への設計」で過去を学び未来を考える

この20年ほど改革を迫られ続けて今や疲弊の極みに達している,そして実際に論文数はガタ落ちになっている(それでも「改革が足りないからだ!」とか言えてしまう人達に囲まれている),日本の大学の将来を考える上で,まずは過去を知る必要がある.その観点から,とても勉強になった.というか,これまで知らなさすぎた. 著者である吉見俊哉氏は,現状を以下のように指摘している. では,1930年代以前はどうだったのか. 明治時代以降,旧制高等学校が,高等教育機関として,帝国大学を中心とする旧

[メモ]MacにPythonとJupyterLabをインストールする

使用中のMacBook ProでPythonを使うために,PythonとJupyterLabをインストールした.これまでJupyter Notebookしか使ったことがなく,JupyterLabは初めてになる.環境は以下の通り. macBook Pro (2021) Apple M1 Max macOS Mnterey 12.3.1 作業日 2022/5/9 作業手順は以下の通り. Homebrewのインストール(必要なら) pyenvのインストール(必要なら) p

研究のために「音楽の基礎」を身に付ける

研究室の学生が音楽に関連する研究をしたいと直談判に来て,どのような研究がしたいのかを聞いたところ,これまで研究室で取り組んできた研究および学生自身が取り組んできた研究と接点がないわけでもないので,「やってみよう!」ということになった. その研究では「音楽理論」を使うらしいので,指導教員として音楽理論をまったく知らないわけにはいかない.というわけで,音楽のことは何も知らず,楽器を弾くことがないばかりか,音楽を聴くこともあまりない私が勉強することにした.何から手を付けていいかす

卒業論文や修士論文を書く学生へ

毎年,10名以上の学生の修士論文や卒業論文を添削する.これまで添削していて気になったことを,Twitterなどに書き散らかしたりしてきたが,まとめてメモしておく.(以下の文章は2015年2月に書いたものを編集したものです) 第1段階:正しく書く 論文に限らず,文章を書くときには,正しい言葉で書くことを常に意識すべきだ.読みやすいとか,分かりやすいとか,それらも当然大切だが,それら以前に,正しくなければならない. 誤字脱字のある論文原稿やレポートを書く人には,「そういうケ

懸命より賢明に: Capability Trap

製品に欠陥があって顧客からクレームが来たとか,事故が起こったとか,何か問題が発生したとき,あなたが所属している組織はどのように対応しているだろうか.もちろん,その問題を解決する必要がある.そのために,上司は部下に「何とかしろ!」と叫ぶだろう.部下は必死になって問題を解決する.その結果,上司は胸を撫で下ろし,自分の指導力に満足する. しかし,これこそが問題なのだ.確かに,問題は解決された.しかし,目の前の問題を解決するために全力を傾けてばかりいると,人・金・時間といった資源は

運転時居眠り検知技術について解説しよう:電気通信普及財団賞受賞

折角なので,この記事では運転者の居眠りを検知する方法を紹介しよう.素人向けに書くので,玄人は黙っていてもらいたい. 表題の通り,ウェアラブル心電計を用いて運転中の居眠りを検知し,交通事故をなくそうという研究の成果にて,電気通信普及財団賞(テレコムシステム技術賞)を受賞した.今回授賞対象となったのは,IEEE TBMEに掲載された以下の論文だ. Fujiwara, K., Abe, E., Kamata, K., Nakayama, C., Suzuki, Y., Yama

日本鉄鋼協会 計測・制御・システム研究賞を受賞

「モールド内溶鋼流動のリアルタイム推定」の研究成果にて,日本鉄鋼協会 計測・制御・システム工学部会より,部会賞である計測・制御・システム研究賞を受賞した.これは,JFEスチールの橋本佳也氏が中心となって取り組まれた研究の成果である. 本研究成果は論文として Metallurgical and Materials Transactions B にて発表している. Y. Hashimoto, A. Matsui, T. Hayase, and M. Kano, “Real-T

化学工学会技術賞を受賞:高炉操業支援

「高炉溶銑温度制御ガイダンスの実用化」という業績にて,化学工学会技術賞を受賞した.この技術開発と実用化には,JFEスチールの橋本佳也氏が中心となって取り組まれた.成果の一部は,橋本氏が当研究室(京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻・ヒューマンシステム論分野)で社会人博士課程に在籍されていた当時のものである. 以下で,この技術について簡単に紹介する. 開発の背景鉄鋼製品の原料である鉄は,鉄鉱石(酸化鉄)とコークス(炭素)を高温で反応(還元反応:酸化鉄+炭素→鉄+二酸化

【論文紹介】連続直打プロセスの管理戦略

今,注目を集めている医薬品連続生産技術.日本医療研究開発機構(AMED) 医薬品等規制調和・評価事業「医薬品の新規開発と製造変更における品質管理手法に関する研究」の一部として,特に直打プロセスを対象に連続生産の管理戦略とその実装方法について検討した成果が論文として公開されました.滞留時間分布モデルを中心にまとめられています. Y. Suzuki, H. Sugiyama, M. Kano, R. Shimono, G. Shimada, R. Furukawa, E. Ma