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耳鳴り潰し253(走れた、糸目関西弁キャラ、架空エッセイ案)

 次に何のアニメを観るか問題は「けいおん!」がまだ途中だったことを思い出して事なきを得る。

 息子に水筒を持たせるのを忘れたことに少し遅れて気が付く。時間割表を見ると一時間目はまだ始まっていない。慌てて学校まで走った。走れた! 少し前まで歩くのもやっとの時期があったのに、いつの間にか走ることができるようになっていた。子どもとのボール遊びの際に、大きく逸れたボールを取りに少し駆ける、くらいはこれまでもできた。歩いて数分の道のりのほとんどを走り続ける、ということは考えもしなかった。

 首、肩、頭の具合がそれだけ良くなっている、ということだった。最近の不調は主に耳鳴りの肥大化によるものだったので、身体は動くようになっていた。

 教室に着くと、朝の準備で子どもたちは学習用タブレットに向かっている。息子はこちらに気付かない。早めに準備を終えて窓際でお茶を飲んでいた子が私に気付いて用件を聞きに来てくれた。不審者扱いされなくてよかった。

 整形外科へ。年末年始用に多めに痛み止めを貰う。PC作業環境を整えると首と肩はだいぶ改善したことを伝える。指を叩く神経反応はまだ少し見られた。整形外科とは関係のないことだが、耳鳴りが大きくなってつらいことも伝える。リハビリの際に作業療法士さんにも伝えたことだが、前回の来院時に比べてもはっきりと耳鳴りは大きくなっていた。待合室ではテレビもついているし、患者さんたちの会話も多い。これまでならそれらにある程度かき消されて、ただ待っているだけで耳鳴りを苦痛に感じることはなかった。それが今ではそれら全てを突き抜けて、ハウリング音のような耳鳴りが鳴り続けている。

 漫画「ブラック・ジャック」で、空港近くに住む男性が騒音を苦にして、自分の耳に熱湯をかけるシーンがある。耳鳴りの苦痛が増すとその場面をいつも思い出す。しかし鼓膜を破ったところで、必要な音声だけが掻き消え、耳鳴りだけが残る気がする。

 穂村弘のエッセイ集「蛸足ノート」を読む。見開き2ページ内に収まる、何でもないような、どうでもいいような、穂村弘的といえるような内容がどんどん続く。いつまでも四十代のような気がしていた著者も、いつの間にか「会社勤めのままなら定年の年齢だ」なんて書かれていて驚いたりする。

 そもそもnoteを始めたきっかけは、穂村弘的なエッセイを書きたいなと思ったからだ、ということを思い出した。しかし私にはエッセイ的な文章を書くには、圧倒的に経験が足りていない。大槻ケンヂのエッセイを読み漁っていた時にも思ったが、面白いエッセイを書ける人は、豊富な経験を積んでいるのだ。

 現在私は子どもたちのことを多く書いているが、そのうち書けない範囲のことが増えてくるだろう。それならばいっそ架空エッセイを書いたらどうかと思いついた。現在「架空書籍紹介シリーズ」を書く習慣が途絶えている。先週、画像生成が朝うまく機能していなかった、その後は子どもたちとの遊びで書く隙間がなかった、時に途絶えたものだ。短歌の方は翌日二首詠んで追いついたが、架空書籍の方は、今では思いついた途端に実際にkindle書籍を作り始めることが増えていたので、無理に書き続けなかったのだ。役割を終えたともいえる。

 その時間を架空エッセイにあてたらどうかと考えたのだ。「蛸足ノート」一回あたりの最大文字数は40×29行。1160文字。ざっと1000文字前後と考えたらいいか。買い物だとか、散歩の折に観た風景だとか、実際にあった出来事をベースにして、そこにフィクション要素をはっきりと分かるように混ぜるような感じで。日常のバリエーションを拡大するような意識で。近所のリサイクルショップを覗いたら、現実ではありえないものが売っていたとか、犬の散歩ではなくて怪獣を連れている人がいたとか、そんな感じで。

 初めてのスーパーを訪ねた。噂には聞いたが、近所の大手よりも安い物もある。食パンは近隣では底値でもある。あれやこれやを見ながら、小ぶりのホールケーキもあったのでクリスマスケーキはこれでいいと決めた。

 息子帰宅後、「怪獣8号」の続きを観たがる。娘が帰ってくるまでに、というわけだ。少し遅れて娘は帰宅したが、すぐに遊びに行ったので「怪獣8号」4話まで観た。飯時を挟まずにこれだけ一つのものを集中して観るのは珍しい。思えば常に怪獣側の味方であった息子にとって、怪獣(と融合した人間)が主人公側というのが嬉しいのだろう。でもすぐに「このことは内緒にしておいて」と頼む8号の姿はかっこ悪い、とも言っていた。

 その後の粘土遊びでは観たばかりのアニメのシーンの再現を演じることに。ただの丸い粘土の塊の後ろを二か所伸ばして「キコル」と言い張ってみる。息子の作る、触手をたくさん持つ巨大なヘビの怪獣に、誰もがやられていく。防衛隊三番隊副隊長、保科宗四郎を演じながら「目が細くて関西弁を使うキャラは大体裏切る」という説を説明する。保科がそうなるかは知らない。
「BLEACHっていう漫画に出てくる市丸ギンっていう人がいてね。その人の能力は剣を13㎞伸ばせるんだけど」
「13㎞!?」
「魅力的なキャラクターデザインの多い漫画、アニメだったよ。『グリムジョー・ジャガー・ジャック』とか」
「『ジャ』多いな!」

 空間、気圧、状況によるものか、息子と粘土遊びをしていた和室では、耳鳴りは既に痛みを伴うものになっていた。

 今日の一枚「ギブソンSGしか配るつもりのないサンタクロース」

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泥辺五郎
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