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一万編計画

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一万編の掌編小説(ショートショート)を残していきます。毎日一編ずつ。
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2024年7月の記事一覧

コロッケ。

湯船には透明感のあるサラダ油がたぷたぷに張ってあって、僕はコロッケのタネとともに浸されて…

人いきれ。

部屋はいつも息苦しい。過去の遺失が集積しているのだ。僕の吐き連ねた二酸化炭素が、自慰のた…

リス男。

男はリスを心底羨望していた。 「リスにでもなりたいよ」 男は酒を飲むと決まってその願望を…

パーフェクトまみ。

右耳が疼く。多分、誰かが私を歌にした。こめかみが痒い。多分、誰かが私の夢を見ている。風が…

The Birthday's Vomit.

嘔吐をしている最中に、今日は君の誕生日であったことを思い出した。 いったいいつまで嘔吐を…

少年茸。

ヒトタケは麻や葦の付近に自生する、とても稀少なハラタケ類に属するキノコだ。人間の主に少年…

暦シャッフルズ。

暑すぎる。 「なあ、干涸らびちまいそうだぜ」 「俺は溶けそうだよ」 「腐っちまいそうだ」 「アイス食べたいなぁ」 暦シャッフルズは、自在に暦を入れ替えることができる。 「よし、今日を12月20日にしよう!」×4 暦シャッフルズの目には、たちまち雪化粧が訪れる。 「なあ、随分肌寒ぃじゃねぇか」 「俺は凍りそうだよ」 「風邪引いちまいそうだ」 「おしるこ食べたいなぁ」 でも、それは全身全霊の思い込みに過ぎないから、効力は10秒ほどだ。でも、脳を完全に騙すに

くじら。

私のデコルテを泳ぐ鯨のタトゥーを、彼は決して触らなかった。 「どうして、鯨なの?」   …

霹靂。

うっかり、裸のままで外へ出てしまった。もちろんそんなことすべきではなかったけれど、連日の…

ブラック・ジャック。

「21番目の人と、添い遂げることを決めていたの」 彼女は最後まで、僕がどの序列においての21…

てのひら。

掌に収まるものが好きだった。落ち葉や木の実は、掌いっぱいに愛を送ることも、その全身をきつ…

寓話F。

鮭は、同志に問う。 「どうして、海に残っちゃ駄目なんだろう?」 汽水域まであと1海里ほど…

曖昧なジレンマ。

「どうして〝好き〟と〝愛している〟しか恋を伝える表現がないんだと思う?」 彼の声は大きく…

ユメポックル。

ユメポックルは、眠り糸を上手に結べる妖精だ。眠り糸は、脳みそから皮膚をつきぬけてだらんと垂れていて(数の多い人間もいれば、一本しか生えていない犬もいる)、これを床に縫い付けることで夢を見る。ユメポックルは結び方で夢を調理する。だからユメポックルが好かれると良い夢を見れるんだけども、ひとつとして同じユメポックルはいないから(例えば、ひとつと呼ばれることに赫怒するユメポックルもいれば、そうでないと受け付けないというユメポックルもいる)、結局は良い夢も悪い夢も同じくらい見る。 ユ