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なぜ働いていると本が読めなくなるのか【爆売れ中の新書!】

疲れて読書する気にならん…
本を読んでも頭に入ってこない…

最近、度々感じておりましたから、この本を知った時は「まさに私のための本ではないか!」と興奮しました。

しかし、どこの書店を探しても在庫切れ…
やっとの思いで手に入れました(笑)

この本がこんなにも売れているということは、仕事が忙しくて満足のいく読書ができていない方がそれだけ多いということでしょう。

今回は『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』をご紹介します!


○著者

●三宅香帆
・元々読書が好きで文学部出身の文学女性
・就職したが、本が読めないことをきっかけに会社を退職
・現在は書評家として活躍

○ジャンル

●新書
・読書史
・労働史

○あらすじ

 文化的な生活(本書で言うところの読書)と労働は本来両立されるべきものなのに、現代の日本では労働が文化的な生活を搾取している。

 時間が仮にあっても疲労で、読書をする気が起こらず、ついついスマホを触ってしまう。

 読書術や速読本が流行るのも、労働と読書の関係性に悩む人が多いことの一種の表れ。
(そもそも世の中の人が満足できる読書をしているとすれば、読書論は生まれない。)

 本書では明治まで遡り、日本の労働と読書の関係性がどのように変化して、今のような時代になったのか、また、どうすれば文化的な生活と労働が両立できるようになるかを考えていく。

※ちなみにこの本の「読書」は「読書以外の自分の趣味」に置き換えても読めるので、読書に興味の無い方も全然読む価値アリです。

○各時代のトピック(読書メモ)

私が読書をしながらとったメモ(抜粋)になります。
本書を読む際の参考にしていただければと思います。

明治

・政府が読書を薦める
・長時間労働の幕開け
・朗読から黙読
・活版技術により本が普及
・句読点により本が読みやすくなる
・努力して出世しようみたいな風潮(立身出世)や自己啓発書の源泉が誕生
・本を読もうと思うかどうかにも、格差階級がある

大正

・労働者階級(農業や工場)とサラリーマン階級に隔たりが生まれる
・修養…努力、勤勉などの行為
・教養…知識
・労働者階級では修養、サラリーマン階級では教養を身につけることが流行る
・不景気などの社会不安も相まって、宗教、内省、社会主義に関する本がベストセラーに
・図書館や書店が増加して、読書人口が増え、読書の拡大期

昭和戦前、戦中

・関東大震災により出版業界に大打撃
・出版業界は「円本」というシステムにより復活
・円本…全集を安い価格で毎月販売するもので、現代のサブスクに近い。実際に読まれずにインテリアとして飾っておく、いわゆる「積読」としての側面もあった。
・現代のパズドラのようなスマホゲーム(受動的娯楽)が、当時は演劇や映画、大衆向け雑誌
・戦時中はもはや本を読むどころでは無いが、すぐに人々が本を読まなくなったわけでは無い

1950〜1960年代

・サラリーマンや労働者階級の娯楽はそれまで囲碁が中心だったが、この頃からパチンコや競馬が誕生
・紙の高騰により全集や文庫が普及
・現代の1.5倍の労働時間で日本史上最も長い
・働くサラリーマン向けの本(ハウツー本やサラリーマン小説)が多数誕生したが、結果的に労働者階級に読書を解放することになり、階級に関係なく読書するようになった時代

1970年代

・テレビが娯楽の筆頭となる
・テレビの影響もあり、歴史小説やエンタメ小説が広まる
・企業教育で「自己啓発」という言葉が使われ始める
・文庫本が多く刊行され始める
・通勤電車で読書するというのはこの頃根付き始めた
・司馬遼太郎がサラリーマンにブーム

1980年代

・「若者の読書離れ」という言葉が使われ始めた
・バブル経済により出版業界も大盛況
・教養よりもコミュ力や処世術の本がサラリーマンで人気になる
・それまで男性中心だった教養が女性にも開かれるようになる
・主婦層のカルチャースクールへの参加がブームに。その風潮を揶揄する構図は、現代のオンラインサロンを揶揄する構図と似ている
・読書は学歴が無い人が教養を身につけ、階級をのし上がる手段の1つとなる

1990年代

・政治の時代から経済の時代へ
・内面の時代から行動の時代へ
・自己啓発書が売れるようになる
・自己啓発書の特徴として、ノイズ(自分でコントロールできないもの)を除去して、コントロールできるものにいかに注力するかが語られる
・読書は何がやってくるか分からない、コントロールできないものであり、働くことのノイズとなる

2000年代

・仕事によって自己実現を目指そうとする時代
(自己実現は仕事以外、趣味などでも良いはず)
・IT革命により、「情報=ノイズの無い知識、自分にとって必要なことのみの知識」の価値が高まることにより、ノイズのある読書離れが進んだ
・ノイズとは偶然性
・ノイズのある読書をどのように楽しんでいくか

2010年代

・働き方改革
・SNSが本格的に
・娯楽が情報収集になる(早送り、ファスト教養)

○半身社会に向けて

・読書=今は自分とは遠く離れているかもしれない他者の「文脈」と繋がること
・仕事に「全身全霊」ではなく「半身」で関わる
・仕事以外の文脈を取り入れる余裕のある社会が望ましい
・全身全霊になること自体も、称賛するのもやめる
・仕事一本集中にならない。仕事以外のことにおいてもこれは同じ。
⇒1つのことに全身全霊になり過ぎずに、半身を意識して、余裕をもった状態にしておく

○感想

・新書と言うと、お堅いイメージで、しかも内容が読書史・労働史だが、堅すぎず読みやすい

・ところどころに著者の本音のようなものが書かれている箇所があり、同世代の自分は読んでいて、ついつい「分かるわ~」と共感した(笑)

・「積読」、「スマホゲームのような受動的娯楽」、「サブスク」などの現代に普及しているコンテンツも、体裁が違うだけで根本的には似たようなものが実は昔から同じようにあったのは面白い

全身全霊をやめる。これがこの本で最も伝えたいことだと思う。この本が今たくさん売れているが、それにより、「全身全霊ってちょっとどうなの?」と思う人が増えれば「半身社会」も決して絵空事ではない気がする。

・本が読めない、読む気にならないのは、自分だけではない、悪いのは必ずしも自分のせいではない、読めなくてもある意味仕方ないかもしれないと思わせてくれて、少し気が晴れた

・巻末の著者のオススメ読書法6選も良かった

・本著に関する著者へのインタビュー動画がYouTubeにいくつかあり、これらも併せて視ることでより理解が深まった


以上です。
仕事で疲れて本が読めない方も、この1冊はぜひ読んでみて!


○関連記事

私は片道100分以上の長距離通勤をしており、その時間で読書をすることが多いです。
通勤に対する私の考え・ノウハウを本にしましたので、気になる方はぜひこちらの記事も読んでみてください。


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