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狂気の歴史と監獄の誕生 『監獄の誕生 ― 監視と処罰 by ミシェル・フーコー (著), Michel Foucault 』レビュー


Reviewed in Japan on June 21, 2003 Amazon

フーコーによれば、18世紀の間に、「大多数の狂人が……彼ら特有の避難所を見い出す」という「ひろく全ヨーロッパに実際観察されうる」現象が生まれる。言い換えれば、「狂気を別個に扱い、かつて狂気がそのなかで雑然とごたまぜにされていた非理性に対して、狂気を自律的なものにし始める」過程が開始される。すなわち、監禁の空間の中に一つの空隙、亀裂が生まれ、そこから〈狂気〉が、〈非理性〉の広大なカオス/包囲網を破る自律的で個別化されたものとして浮上してくる

 だが、ここで主役として登場してくるのは、実は「理性」である。「理性が再び自分を見い出し得る、もうほとんど自分を認知し得る」にいたる、そのような過程において、かつての「非理性」の領域から、この〈狂気〉の自律化・!個別化/分離抽出にとって「余計なもの」が外部へとはじきとばされていく。この過程で、監禁の空間は、〈犯罪〉(者たち)と〈狂気〉(の者たち)という二つの領域へと絞り込まれ、監禁の空間は、これら二つの領域の不可分な接合体となる。やがてこの接合体は、「監獄」と「狂人保護院(いわゆる「精神病院」)」へと純化されていくのである。

 では、資本主義グローバル市場の時空において、《一望監視方式》という純粋機能(同時に権力のカテゴリー=見られることなしに、絶えずすべてを見ることができるような場=ダイアグラム)は、一体どのような変貌を遂げているのか。
このような問いは、まさにフーコーの探究からでしかありえない。
フーコーは、確かに世界を変えたのだ。


過去ツイート

自ら語っているがフーコーに対するハイデガーの影響は決定的でありフーコーの哲学的果実のほぼ全てはニーチェ以上にその根底においてハイデガーの系譜だと言ってもいい。フーコー最初期の仕事は1954『ビンスワンガー『夢と実存』への序論』である。



ジュディス・バトラーフーコーの共通点は(またバトラーがあれほどフーコーに惹かれた理由は)両者とも自らの本格的な思考活動をドイツ哲学を読むことから始めたということである。両者とも自らの思考言語(特にフーコーの場合は同時に詩的言語)を母語とドイツ語の複合体として磨き挙げた。


カントウィトゲンシュタインフーコーの核心的な共通キーワードは「図式」または「ダイアグラム」である。これはカント的に言えば、「哲学の秘術」(『純粋理性批判』原則の分析論「純粋悟性概念の図式機能について」)に属する。



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