雨のDaydreamer☂

思いつきショートショートなどストーリー的なものを書いています。 雨の止まない街を舞台にして~と思ってましたが、最近は何でもよくなってきました。

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思いつきショートショートなどストーリー的なものを書いています。 雨の止まない街を舞台にして~と思ってましたが、最近は何でもよくなってきました。

マガジン

  • 雨が止まない街で書いたストーリー

    そこは1000年雨が止まない街。肺呼吸をする人間、エラ呼吸をする水人間、意思を持つロボットが共存している。

最近の記事

ピースサイン

世界が平和になりますように。 親友はそれだけ言って飛行機に乗っていった。 宗教同士だかの戦争を止める運動をするために。 みんな平和な世界の方がいいと思っているのに 世界のあちこちで今日のごはんのために人が殺しあう。 もし神様がいるんなら一言こう言ってやる。  「うそつき」 親友が帰ってきた。 骨になって。 飛行機が燃料補給に降りた空港で強盗に殺されたらしい。 盗られたのはたった3ドルのお金とオイルライターだけだった。 3ドルとライターのために親友は死んだ。 戦

    • 元カノの影響

      元カノはティーバッグを干して2度淹れる人だった。 貧乏くさいと思ったけど、優しい元カノの人柄に触れながら何でも大切にする心がうつったようで、自分も家でティーバッグを干すようになった。 ただ、ある日冗談で元カノが干していたティーバッグをパンツのティーバックにすり替えたらフラれた。 その後、別の女性と仲良くなったのだがティーバッグを干して使う癖は抜けなかった。貧乏くさいと言われたけどなんとなく続けていた。そろそろ付き合おうか、なんて空気になってきてベッドインした時に冗談でテ

      • だから僕は音楽を辞めた。だから、

        ヨルシカの「だから僕は音楽を辞めた」って曲を彼女に聴かせたら現実に気付いたみたいで「いい加減、音楽辞めろ」って次の日、あっさり振られた。 直接会える距離だし、LINEもあるのに大して絡んでないTwitterのDMで別れを告げるってどうなのか、と思いつつ俺も元カノと過ごした3年を清算する意味も込めて本当に音楽を辞めることにした。 自分が音楽で特別な人間になれるような気がして続けてきた。けど最後に気づいたのは自分が誰でもないって事実だけだった。 だから俺は音楽を辞めることにした

        • テーブルの下の告白

          僕と彼女は同い年の大学生で、演劇レッスンの同級生だった。 そのレッスンは社会人から学生まで色んな人が参加していたけど、みんな気のいい人ばかりでレッスン終わりにスタジオ近くのどんぶり屋で騒ぐのが習慣になっていた。 青臭い演劇論で盛り上がる僕達。いつものように彼女は端っこの席から話の輪に入っていた。 彼女の前に座っていた僕はそんな彼女の笑顔をぼーっと見ていた。彼女は先週、付き合いたてだったはずの彼氏と別れたのだ。 僕を通じて知り合った二人。僕が仲を取り持って付き合いだした二人

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        • 雨が止まない街で書いたストーリー
          15本

        記事

          あなたがいて、アバターがいる

          アバター。化身の意でオンラインやゲームなどの仮想空間で自分の分身として振る舞うキャラクターのようなもの。 爽やかイケメン「夜に駆ける最高うぇーい( 0w0)ノ」 キュート系少女「あーね。でも私はあの夢をなぞっての方が好きかも(*´˘`*)♡」 爽やかイケメン「それもいいよね!キミとは気が合いそうだ。今度二人だけのルーム作っていい?(๑•ω•๑)♡」 キュート系少女「えー、どうしよっかなー(•́ε•̀٥)」 老紳士「しかし、ネットの小説を題材にして、ネットから自然発生

          あなたがいて、アバターがいる

          COMING SOON「流星群の夜に」

          その惑星メヌゥアはもう数百年、隣の惑星ガイアと戦争状態だった。もはや何がきっかけで戦いが始まったのかも曖昧だったが、報復が報復を呼ぶ不毛なループから抜け出せないでいた。 しかしある年、ガイアで惑星間レーザーライフルが開発されたことで戦局は一気に傾きはじめた。その巨大兵器はメヌゥアの主要都市を次々に破壊していた。 天から突き刺さり続ける無慈悲な光の剣。メヌゥアには有効な対抗策がなかった。このまま惑星が火の海になるのを防ぐべく有志が立ち上がり結成したのが「流星群特攻隊」であっ

          COMING SOON「流星群の夜に」

          小説っぽく大袈裟に書く「今日は日曜日」

          朝起きて、仕事に遅れる!と思ったら日曜日だったってだけの話を大袈裟に書く。 ヴーン、ヴーン、ヴーン、、、、、 枕の下に入れていたスマートフォンが一日の始まりを告げる。僕は夢の世界から現実に引き戻されたことに少し苛立ちを覚えた。きっと美女といちゃつくような幸せな夢を見ていたに違いない。 なんで夢ってやつはいいところで終わるのか、、、そんなくだらない哲学者ごっこをしながら、重たい瞼をゆっくりと開けた。 部屋の中はすっかり明るく、カーテンの隙間から麗らかな春の陽射しが射し込

          小説っぽく大袈裟に書く「今日は日曜日」

          二つの勝利

          第一章「蕾」10歳の春。少し暖かくなってきたが桜が咲くにはまだ早かった。 手をつないで下校するのが日課だった僕たちは決まってこの道を通っていた。黒くて長い髪が綺麗なキミは吸い込まれそうな大きな目を見開いて言った。 「大きくなったら結婚しよう。先に好きじゃなくなった方が負けだからね」 12歳の冬。両親に僕たちの関係を問い詰められた。僕は居ても立っても居られず、24時過ぎにも関わらずキミを無理やり連れ出した。 キミはとても驚いていて、お母さんが許してくれない、とか、帰ろう?とか

          東京タワーとあの日の嘘

          父が電話ごしに言った。 「東京タワーに上ってこい。」 大学を出て入った会社はたった半年で辞め、上京していた親友の家に転がり込んだ。夕方に起きて朝方までネットとゲーム、親友の出勤を見送ってから寝る。居候でニート。夢を実現させるために上京したはずなのに気づけば3ヶ月が経過していた。 ジワジワ減っていく貯金残高。 他人に迷惑をかけながら将来におびえて暮らす日々に疲れ切っていた。 今日が何曜日かもわからなくなった頃、父が電話をかけてきた。 「仕事は見つかったか?」 家族には東京

          東京タワーとあの日の嘘

          最高に○○な彼女

          「今日も最高に綺麗だね」 『いつもありがとう。貴方も最高の彼氏だよ』 「これから行く水族館、何か思い出さない?」 『わかってるよ、最初のデートをした場所で、初めて手を繋いだ場所。でもあの頃と違うのは、今日は会ってからずっと手を繋いでるし、あの頃よりもっと好き』 「キミは最高に素敵な彼女だよ」 「もう、そうやってすぐに隠れたりして。そうやって俺をからかうところ、最高にチャーミングだよ」 『ありがとう、何回でも笑ってくれる貴方も最高よ』 「今日のお弁当もおいしい。最高に料理

          最高に○○な彼女

          香水

          いらっしゃいませ。当店のご利用は初めてですか? 当店は記憶の質屋でございます。お客様の大切な記憶、思い出と言ってもよいかと思いますが、それを呼び覚ますお手伝いをしております。 3年前に別れた恋人のことが吹っ切れていないのですね。しかし記憶というのは厄介なもので、どれだけ強く思っていても少しずつ思い出せなくなっていきますよね。あれほど愛し合った恋人でも3年も経つと顔、カラダ、声、服装と少しずつ、少しずつ細部が思い出せなくなって、なんとなく良かった場面だけがぼんやりと残るという

          雨の夜、無数のランタンと共に

          1少年は祖父が大好きだった。 最初の思い出は折れた傘の骨を直してくれたこと。次の思い出は時計のネジを巻く後ろ姿。ちょっと器用でいつも優しいおじいちゃんだった。 少年が7歳になった次の日のことだった。傘を直すための工具を買いに出た祖父が交通事故によって還らぬ人となった。しかし祖父の死を受け入れられなかった少年は壊れた傘と共に祖父の帰りを待ち続けていた。 当たり前だが、何年経っても祖父が帰ってくることはなく、少年は15歳になっていた。あの当時の傘は壊れたまま、祖父の作業部屋で

          雨の夜、無数のランタンと共に

          雨を食べるカエル

          毎日、朝から晩まで働き詰めの少年が一枚のチラシを拾った。 《屋外に放置するだけ、エサやり不要。カエルを育ててお小遣い稼ぎを。》 チラシに釣られた少年はすぐに申し込みを行った。すると数日後、硬貨ほどの大きさしかないカエルと一枚の手紙が送られてきた。 「このアマガエルは雨を食べて成長します。大きくなるまで大切に育てていただけた場合、ほんの少しながら謝礼をお支払いいたします。」 雨が止まないその街で、雨を食べさせることは何よりも簡単だった。その日から少年はビルの屋上でカエルを育

          雨を食べるカエル

          相合傘

          そこは雨が止まない街だった。薄暗くなり始めた夕方、街はずれに到着した長距離バスからは傘を握りしめた人が続々と吐き出されていた。 その男は後ろから2列目に座っていた。いよいよ自分も降りようとスーツケースを持って立ち上がったが、一緒に置いたはずの黒い折り畳み傘が見当たらない。上のカゴ、座席の下、隣の座席を見回すが影も形もない。 「探し物ですか?」 と男の後ろに座っていた青年が声をかけてきた。見ると温和な顔で優しそうな青年がこちらを見ていた。 「ええ、雨が止まない街なのに傘が見

          AM4:12

          もう朝か、、、もう朝か? 人も動物もまだ動き出しておらずロボットだけが淡々と動いている、そんな夜とも朝ともつかない時間。仄暗い部屋の中でパソコンの画面だけが煌々と光っている。 ふう、と一息吐き出してマウスを持つ手を止める。一瞬しんとした後、雨の音を忘れるほどに考えてこんでいたことに気付く。 石の妖精が肩に乗っているかのような気だるさが身体に纏わりつくが、ゆっくりと腰を上げ、ゆっくりとカーテンを開けた。 夜が明けて街が起きる前に終わらせたい。再びパソコンに向かってアカウント