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テーブルの下の告白
僕と彼女は同い年の大学生で、演劇レッスンの同級生だった。
そのレッスンは社会人から学生まで色んな人が参加していたけど、みんな気のいい人ばかりでレッスン終わりにスタジオ近くのどんぶり屋で騒ぐのが習慣になっていた。
青臭い演劇論で盛り上がる僕達。いつものように彼女は端っこの席から話の輪に入っていた。
彼女の前に座っていた僕はそんな彼女の笑顔をぼーっと見ていた。彼女は先週、付き合いたてだったはずの彼氏と別れたのだ。
僕を通じて知り合った二人。僕が仲を取り持って付き合いだした二人。本当は付き合って欲しくなかった二人。
物思いにふけっているとポケットのスマホが震えた。LINEの通知が1件、彼女だ。
談笑してるのにいつ送ったのか、いや目の前にいるのにLINEを送る意味が分からなかった。中身を見てみると一言だけ
仲良くしようよ。
と書かれていた。
友達としてなのか、その先の関係としてなのか分からなかったけれど、とにかく驚いて彼女を見た。彼女は相変わらず談笑していたが目が合った瞬間にニヤッと笑った。
ほんの一瞬だったのに、急に色気を感じさせる小悪魔のような微笑みに先程のメッセージの意味が分かった気がした。
僕はもう彼女から離れることはできない気がした。周囲に気づかれないように指先を動かす。
うん。仲良くしよう。
テーブルの下の告白で始まった秘密の関係を悟られまいと、僕は元気に話の輪に入っていていくのだった。