AM4:12
もう朝か、、、もう朝か?
人も動物もまだ動き出しておらずロボットだけが淡々と動いている、そんな夜とも朝ともつかない時間。仄暗い部屋の中でパソコンの画面だけが煌々と光っている。
ふう、と一息吐き出してマウスを持つ手を止める。一瞬しんとした後、雨の音を忘れるほどに考えてこんでいたことに気付く。
石の妖精が肩に乗っているかのような気だるさが身体に纏わりつくが、ゆっくりと腰を上げ、ゆっくりとカーテンを開けた。
夜が明けて街が起きる前に終わらせたい。再びパソコンに向かってアカウントを削除していく。
思えば現実世界よりデジタルな仮想世界の方が広大になったのはいつだったのだろう。仮想世界では皆が知る私、家族も知らない私、幾人もの私の分身たちが無数のコミュニティに入り込んでいる。現実世界で無味無臭な生活を送る私に比べれば何と活き活きとしているか。
でも、そんな分身たちは現実世界の私がマウスを少しひねるだけで簡単に消滅する。まるで分身たちの悲鳴が聞こえてくるようだ。その悲鳴を胸に刻み、死ぬまで忘れないため私は静かな朝4時に、この作業をすることに決めた。
、、、、余命は1週間。先に還元層へ旅立った妻と子にようやく会える。体は朽ち果て、この惑星の糧となり、最後は雨になって世界を濡らそう。