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雨を食べるカエル

毎日、朝から晩まで働き詰めの少年が一枚のチラシを拾った。

《屋外に放置するだけ、エサやり不要。カエルを育ててお小遣い稼ぎを。》

チラシに釣られた少年はすぐに申し込みを行った。すると数日後、硬貨ほどの大きさしかないカエルと一枚の手紙が送られてきた。
「このアマガエルは雨を食べて成長します。大きくなるまで大切に育てていただけた場合、ほんの少しながら謝礼をお支払いいたします。」
雨が止まないその街で、雨を食べさせることは何よりも簡単だった。その日から少年はビルの屋上でカエルを育て始めた。

カエルは屋上へ連れていくと空へ向かって口を開け、本当に雨を食べた。毎朝の日課として雨を食べさせ、終わったら一日放置しておく。本当に簡単な仕事だった。

ただ少年が気になったことが一つだけあった。雨しか食べていないのにカエルが日に日に大きくなっていったのだ。一週間で手のひらほどに、一か月で人の頭ほどに成長するほどだった。

もう屋上に連れていくのも大変だと感じていたある日、雨を食べたカエルがちらりと少年の方を見た。そして大きく跳ねると隣のビルに飛び移り、そのまま雨の中に消え去ってしまった。
少年は慌てて追いかけたが、ついぞカエルは見つからなかった。意気消沈した少年は再び朝から晩まで仕事をする毎日に戻っていった。

それから一年数カ月。少年の元に大きな荷物が一つ届けられた。その中には金塊がいくつも入っており、さらに一枚の手紙が添えられていた。

《皆様のおかげで水をたっぷり蓄えたアマガエル達が無事に帰ってまいりました。雨が降らない我が国にとって恵みの雨蛙です。本当にありがとうございました。カエルの餌代にもなりませんが謝礼をお届けいたします。》

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