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配達員さんに迷惑をかけ、お世話になりました

今年のクリスマスに、Twitterで物議を醸したツイートがあった。

 
ツイートの主の方の話によると
知人がクリスマスに、ケーキを常温で郵送手配したらしい。
ケーキを楽しみにしていたが
郵便配達した時点でケーキはめちゃくちゃだった為
夫婦で郵便局に非があると考え
旦那様が裸で詫びに来るか、代わりのケーキを持参するように電話した。
電話から数時間後、21時を過ぎて
郵便局の方二人がシャトレーゼのケーキを持って謝罪に来た。

最悪なクリスマス、とツイート主は捉えた。

 
 
皆様の反応や意見をまとめると

・ケーキ含めたナマモノは、基本的に郵便局で受けつけない。
・ケーキはデリケートな商品であり、冷凍以外では運ぶことが困難。
・郵送では崩れるのは仕方ないし、常温だと状態が心配。
・品名はどうなっていたのか?
・基本的に郵便配達側は中身を確認できない為、郵便配達側に落ち度はない(ケーキと知らなかった可能性がある)。
・コロナ禍だから、ケーキ屋さんは配達に踏み切ったが、配達慣れしていない可能性もある。
・郵送手配した知人に非があり、郵便局側に謝罪や弁償を求めるのは行きすぎではないか?

といった感じである。

 
 
私はこのツイートや炎上を見た時
私も身に覚えがありすぎて、なんとも言えない気持ちになった。

配達員の方に多大なるご迷惑をかけ、お世話になったことが
私は今でも申し訳ないし、忘れられない。

 
 
   
 
  
 
あれは私がアラサーの頃である。

当時、家電でホームベーカリーが開発されて売り出され、家電業界を華やかに賑わせていた。
女子力が高かったり、パンが好きだったり、料理が好きな方に
ホームベーカリーは売れに売れた。

 
あまりのブームに私も気にはなったが
台所に置くとなると、スペースがなかった。
我が家は物が溢れている。
更に、買ったところで何回かだけ作って
後は棚の奥にしまわれて終わる未来が見えてしまった。

だから気になりつつも
ホームベーカリーには手を出さなかった。

 
 
中学時代の親友は昔から料理が好きで
素材にこだわって料理をしていた。
ホームベーカリーを購入し
パンは全く買わないで、作ることが当たり前になったという。

素材にこだわる方は健康やカロリーをとにかく気にする。
添加物は敵とみなす。

 
ホームベーカリーの置き場所確保さえできず
添加物だらけのパンが安売りになっていたら大量買いする私とは
真逆の生き方をしていると感じた。
キチンとした生活をしているようにしか思えず
親友は偉いなぁと感じた。

同じ中学校に通っていても
同じ女性、同じ年齢でも
パン一つでここまで差が出る。 

 
 
ある日、中学時代の男友達と電話していたら、親友から手作りパンを大量にもらったという話題になった。

私達は三人で仲が良かった。 

三人でも仲は良いが
私と親友
親友と男友達
私と男友達
でも仲はよかったのだ。

 
男友達「すごくおいしかった!」

 
私「ズルい!私も食べたい!他県なのに、どうやってもらったんさ!?」

 
男友達「送ってくれたんだよ。ともかも頼めばいいじゃん。むしろ、ともかはもう食べてると思ったよ。」

 
私「…電話切ったら、親友にパンねだるメールするわ。」

 
有言実行。

意地汚い私は、本当に電話を切った後にすぐに親友にメールした。
「私もパン食べたいよ。」と。
男友達はまだしも

食べたいなら自分で作れよ

というレベルの話である。

 
 
親友「男友達には成り行きでパン渡すことになったの。ともかもパン食べたいの?」

 
私「食べたい!超食べたい!親友ちゃん、昔から料理上手だったじゃん。パンも絶対、上手いし美味い。」

 
親友「素人だし、ホームベーカリーにただセットするだけだよ。分かった~。後で作って送るよ。嫌いなパンはある?」

 
私「レーズンパン以外なら、なんでも大好き!レーズンパンは、普通。」

 
 
後で、と言いながら
親友はすぐに作ってパンを送ってくれた。

 
段ボール(だっけな?)を開けると
見事なパンの詰め合わせだった。
10種類くらい入っていたと思う。 
全てパンの種類が違うだけではなく
ラッピングがまたお洒落で
パウチ止めされた袋の中にパンは一個一個入れられていた。
マスキングテープで飾りつけられただけでなく
猫型シルエットの付箋にパンの名前が書かれ
パン一個一個の包装に貼られていた。
付箋はカラフルで、確か三種類使用していた。

かわいらしい便箋の手紙も添えられていた。
親友は字が非常に上手い。

 
お、お洒落ー!
マメー!!
なんだこの女子力!!!

 
パンは惣菜パンから菓子パンまで様々で
見た目がきれいなだけでなく、味は勿論美味しかった。
母親とシェアして食べた。
「美味しい、美味しい。」と二人で食べた。

 
私は感心したし、感動したし、納得もした。

 
親友は小学生時代に既に彼氏がいたし
25歳で結婚もしていた。

  
私からしたら勝ち組に見えた。

 
彼女の彼氏はみんな頭が良くて優しい人だった。
親友は告白されて付き合い出すが
恋愛は全てフッてきた。 
プロポーズはもちろん、旦那様からである。

 
顔は美しく、スタイルもよくて
頭は良く
ハッキリと意見を言いつつ
甘え上手でもあった。

これに加えて、料理上手でパン作りも上手で
パンを送る時の完璧な配慮。気配り。
もう敵なしじゃないですか。

 
そりゃあモテモテですよ。
流石ですよ。

 
25歳で結婚する女性というのはこういった方なんだと
私はパンをかじりながら打ちひしがれた。

 
私には何もかもが足りないと思った。

 
 
パンのお礼に私は食べ物を贈ることにした。
手作りパンに対抗して手作り●●……なんて贈らない。
なんせ親友は料理が上手い。
私のチンケな手料理じゃ割に合わないじゃないか。

 
親友は大都市に住んでいて
美味しい物は至る所に売られていた。
再会するたびに、地元じゃ売っていないような小洒落た物をくれた。

…………うん、市販なら市販で、非常に悩ましい。

 
なんたって親友も同じ地元育ちだ。
我が県名産お菓子なんか、いくらでも食べたことがある。

うーん………

と、悩んだ時、私は閃いた。

  
 
そうだ!
アレがあるじゃないか!と。

 
 
アレとは、職場近くでは有名なお菓子だが
案外県内の方は食べたことがないお菓子だった。
私も仕事をするようになって、同僚からもらって存在を知ったようなものだ。

 
職場近くには個人店の和菓子屋や洋菓子屋が豊富であり
県内どこでも買えるほど流通しておらず
地元の友達や家族へのお土産や差し入れでも重宝した。

仕事帰りに買える、ただし、県内や県外の人にとって珍しいお菓子。
それを買えるのが、職場近くの和菓子屋や洋菓子屋だった。

 
 
さて、仕事帰りに買えるとは言っても
お店がしまるのは早く
仕事を普通にこなしたら閉店時間になってしまう。

そんな時
たまたまその和菓子屋さんが同僚の親戚だと知り
優しい同僚は代わりに買ってくるとさえ言ってくれた。

  
持つべきものは同僚様である。

  
私は自宅用にも買いたかったので、二箱同僚に頼み
同僚にお金とささやかなお礼を渡し
配送手続きをした。

 
親友には「今配送手続きしたから、近々届くと思う。」とメールをした。

 
 
だが、親友の家には届かなかった。

おかしい…
県外とは言え、次の日には届くだろう。

 
私と親友は首を傾げ、私は問い合わせた。
正直、腹が立っていたし、微妙な気持ちだった。
そのお菓子は常温保存なのはいいのだが
一週間も日持ちしないのだ。
届かない間に賞味期限がどんどん迫ってくる。

 
私は配達員のミスだと安易に決めつけ
内心プリプリしながら問い合わせた。
配送物で問い合わせるのは、人生で初めてのことだった。

 
 
問い合わせた結果、とんでもないことが発覚した。

私が住所を書き間違えたのである。

親友は同じ市内に三回引っ越しをしていた。
住所を使ったやり取りは年賀状くらいだし
私は伝票を書いている際
前の住所を書いていたとは全く気づかなかった。
県外であった為
市名から先の住所に見覚えも聞き覚えもなく
また、三回とも住所がやたら長かったのが
敗因だったとも言える。

 
「それは前の住所じゃん!私、宅配来るって言うから予定開けて待っていたんだよ。配達員にもすごい迷惑かけてるじゃん。」

 
私は親友に怒られた。
謝るしかなかった。

パンのお礼にと、美味しい珍しいお菓子を渡そうと思ったのに
逆に迷惑をかけてしまった。
私は落ち込んだ。

 
 
更に、配達担当の方と話した結果、今から正しい住所に配送となると
賞味期限が切れてしまうということが分かった。

私はバカだ。
珍しいお菓子とか美味しいお菓子とかではなく
賞味期限をもっと長いものを買うべきだった。

 
住所もキチンと確かめるべきだった。
私は浅はかだった。

 
私は配達担当の方に伝えた。

 
私「お手数ですが、処分していただいてもらってよろしいでしょうか?
住所を書き間違えて配達が二度手間になり、しかも賞味期限まで切れさせてしまい、本当に申し訳ありませんでした……。

また改めて送り直しますので、その際はよろしくお願いします。」

 
私は自分の失敗に落ち込んだ。
ドヨーンとした。 
親友との差にひどく落胆したし
親友に咎められたこともまた、私には悲しかった。

 
ところがそんな私に
配達担当の方はおっしゃった。

「賞味期限内に配達できなかったのは、私達のミスです。
新たな商品を私共で購入し、賞味期限内に送らせていただきます。

お代は結構です。」 

 
 
私は耳を疑った。

 
私が全て悪いのだ。

住所を十分に確認しなかった私が悪いし
日持ちしないお菓子を選んだことも悪かったのだ。

配達員の方は指定された住所まで指示通りに配達しただけだ。
落ち度はまるでないのだ。

 
「そんなわけにはいきません。私が悪いので、改めて購入して配送します。

ただ、賞味期限切れの物の処分だけはお手数ですが、お願いしたいのです。」

 
私は再度伝えたが、配達担当の方は私の要望は突っぱねた。
そして、配達側が全額負担し、賞味期限以内に無事親友の元へ届けられた。 
申し訳なかった。

「も~何やってんのよー。配達員さん、かわいそうじゃん。」

私はただ親友のパンが食べたかっただけだった。
お礼に美味しいお菓子を送って、喜んでもらいたかっただけだった。
だけど、失敗してしまった。

 
私は親友を不快な思いにさせてしまったし
配達担当の方には迷惑をかけてしまったし
お金は負担させてしまったしで
なんとも微妙なお礼になってしまった。

 
もう、このお菓子を誰かに送るのはやめよう…
プレゼントする際は、手渡しで渡そう。
そして、引っ越しが多い友達の場合
住所録をキチンと正そう。
念入りに確認しよう。

私はそう、思った。

 
 
 
   

 
私はほぼ毎週アマゾンで買い物をしており
配達員の方には非常にお世話になっている。

時間指定の配達があったり
夏場冬場の配達があったり
今年はコロナがあったりと
配達員の方は毎日毎日大変だと思う。

 
コロナ差別もあるらしいし
コロナ対策も念入りだろうし
毎日遅くまで荷物を届けていただき
感謝の気持ちでいっぱいである。

 
私が適温の部屋で過ごし
スマホを指でいじってササッと注文した物を
配達員の方はどんな天気の日でも荷物を詰め込み、運転して、時間内に自宅まで届けてくれる。

仕事だからやって当たり前かもしれないけど
それでも配達員の方々がいなかったら
私の生活は成り立たない。
配達員の方々に感謝しかない。

 
私の生活を
人々の生活を支えてくれて
「本当にありがとうございます。」と伝えたい。


 

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