見出し画像

イギリス人の目から見た東アジアの戦争「太陽の帝国」

<文学(155歩目)>
SF作家のJ・G・バラードさんの代表作の一つですが、SFよりも、上海で少年時代をすごしたJ・G・バラードさんの目から見た東アジアの戦争が鮮やかに描かれています。

太陽の帝国
J・G・バラード (著), 山田 和子 (翻訳)
東京創元社

「155歩目」は、J・G・バラードさんはイギリスを代表するSF作家ですが、この作品は文学としてじっくり読める作品です。

上海租界で両親とはぐれて戦後までを生き延びたジム(おそらくJ・G・バラードさん本人)の目から見た戦争は、戦争文学として秀逸です。
作品内では、長崎への原爆投下が描かれている。

スピルバーグさんの映画の中でも非常に印象的なシーンですが、作品内では「見方」への描写が映画では知らなかった箇所あり。

日本人にとっては「敗戦」を決定づけたシーンとして。
そして、J・G・バラードさん等収容所に収容されていた欧米人にとっては「終戦」を決定づけたシーンとして。
これに中国人の目線が色濃く加わっている。「長崎の原爆」は、中国人にとっては国土が荒廃した戦争(日中戦争から国共内戦)の「途中」の一シーンでしかないこと。

「中国人たちは何も言わずに見つめつづけた。(‥)その顔には何の表情も現れていなかった。ジムは(‥)みんなが何を考えているのかが分かった。(‥)いつの日か、中国は世界を罰するだろう。恐るべき復讐を果たすことになるだろう」。

この視点が映画ではわからなかったJ・G・バラードさんが伝えたかったことだと感じました。

この戦争を考えるうえで、それぞれの立場を考えて学ばないといけないと感じました。

#読書感想文 #わたしの本棚 #太陽の帝国 #J・G・バラード #山田和子 #東京創元社 #第二次世界大戦 #日中戦争 #国共内戦 #上海 #国民党 #共産党 #長崎の原爆 #文芸 #小説

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?