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中毒性が高いSF短篇集「鹽津城」

<SF(228歩目)>
中毒性が高いSF短篇集です。久しぶりに読了に時間がかかりました。なかなか難しいテーマが多いです。

鹽津城
飛 浩隆 (著)
河出書房新社

「228歩目」は、飛浩隆さんの新作SF短篇集。

「流下の日」
この作品も中毒性が高い。
飛さんの世界観なのですが、何故か近未来の日本を間近で見ている気分になる。「自制党」って何かの冗談なのか?と思ってしまった。
それにしても、テクノロジーで人々の生活は便利で快適になっているはずだが、何故か主人公の故郷はそんな大きな変動を経た日本から意図的に取り残されている。
ここにこの物語の核心部があった。
なぜ?40年前に大きな政治改革が起きた時に、大災害があったのか?
乙原朔首相の作り上げた新しい世界とは?
少子化と低成長の中で、飛さんが提起する私たちの未来は。。。
とても不思議な作品で中毒性が高いと感じた。

野放図な利益追求者に自制をさせるために「自動的に自制を強いるツールを取り入れた」とあるが、ここまでたどり着いた時にはよくある「ディストピア社会」なのか?と感じたが、ここからが深かった。

現在進行形の「マイナンバー」とかいろいろな仕組みがあるが、その先の社会を覗けた気分です。

「緋愁(ひしゅう)」
この作品は、「オウム真理教」(現:アレフ)を感じたが、読み進めるともっと深かった。「緋色」という色が眼に浮かぶ作品です。

「鹽津城(しおつき)」
この表題作は、最も中毒性が高い。
「しお」に覆われていく世界、「塩」がいろいろな使われ方をしている。「塩」「志於」「鹽」「潮」「鹵」「鹹」と使われる漢字も知らない感じも多い。
この「しお」に覆われた不思議な世界が舞台。

この「しお」にとらわれいたら、この作品が三層構造であることに気づいた。過去・現在・未来の物語だが、原発事故が起きた世界、起きていない世界、これが「Facet1 志於盈の町で」「Facet2 鹹賊航路」「Facet3 メランジュ礁」と三重に描かれている。
この本にある作品で一番難しく、再読してやっと理解できた。すごく中毒性が高い。
なんか、「Facet1 志於盈の町で」の渡津託朗と巳衣子の関係が濃いと思っていたら、「Facet2 鹹賊航路」の双子の村木一瀬と村木百瀬の双子がもっと濃かった。
1、2と来ているので3が最も難解だと思っていたら、「Facet3 メランジュ礁」の天野甘音が最も脳を突いてきた。。。

何とも言えない、非常に難しいが、心を突いて忘れられなくなる思わぬ鋭さを感じる作品でした。

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