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愛(love)はいつだってとても痛い「愛しいあなた」

<文学(195歩目)>
「愛」にまつわる10の短篇の詰め合わせ。どの短篇に心を突かれるのか?読み手に問う作品集です。

愛しいあなた (現代台湾文学選)
劉梓潔 (著), 明田川聡士 (翻訳)
書肆侃侃房

「195歩目」は、台湾から現代の「愛」のいろいろな形を突いてくる良質な作品集。思わず引き込まれました。

劉梓潔(エッセイ・リウ)さんの短篇集ですが、驚くほど心を突いてきます。

10ある短篇のそれぞれが私の心の異なる10の場所を突きました。
装丁が美しかったのですが、作品もたまらなく美しいと感じました。

私には特に下記の二篇が素晴らしかったです。

「プレゼント」
不妊症と代理母の問題。かねて、いろいろな作品を読みましたが、この「プレゼント」が一番突いてきました。

巻頭の「その後何度もウディ・アレンの映画を観たけれど、主役は定番のペラペラしゃべり続ける老人で、その中のセリフにこんなものがあった。「前に俺が女の体に入ったのは、自由の女神だったかな」李君娟は思った。彼女の七年間もそんな感じだ。「前にわたしの膣に触れた圧は、3400グラムの赤ん坊だったかな」。

この一文が、どこにかかるのか??わからなくて読み進めました。

途中で、エッセイ・リウさんの伝えたいことの全貌が見えてきてから引き込まれました。
「愛」にはいろいろな形あり。一つとして同じものはない。
瞬間、幸せと感じたものがそうでないことも。ある瞬間、不幸と感じたものが同じくそうでないことも。
とても考えさせられる。

驚いたことに、この作品は読み手が若くても、年を取っていても、心を突く作品であること。小説の可能性をとても感じました。

「愛しいあなた」
子どもが欲しくてたまらない時、心を突いていきます。

巻頭の「誰かが現れた時に私はいつも希望をもってしまう。お願い、これで最後にしてって。いつまでも堂々と言える関係でいさせて、楽しみながら赤ちゃんを生ませてって。でも、私にはぽっかり穴が開いているかのように、どの男もとどめておくことができないのだ。」
この一文が、どこにかかるのか??はすぐにわかる。
でも、読み進めると「全体」に横たわることにかかっているのがわかり、心にとても残る。

エッセイ・リウさんが生み出した10人の子供たち(作品)は、それぞれに性格が違う。でも、そんな性格の違いだって、違っていて当然だよね!と言われている気がしました。

国は違うが、「子どもたち」(作品)が色々と成長してきそうで、とても読んでよかったと思いました。

あ~、台湾の現代文学、とてもいいですね。

台北でも、台中でも、そして日本のいろいろな都市でも、この感覚はとても共感できました。

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