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70年前の作品も、かなり突いてきます「人間の手がまだ触れない」

<SF(158歩目)>
何気に、現代社会の問題点も突いています。予測はしていなかったと思いますが、人間の本質をうまくとらえていたと感じました。

人間の手がまだ触れない
ロバート シェクリイ (著), Robert Sheckley (原名), 稲葉 明雄 (翻訳)
早川書房

「158歩目」は、ロバート・シェクリイさんの70年も前の短篇集です。
作風は勿論、70年前で古いが、心を突くものが多く、21世紀の私たちにも興味深い作品になっている。

そして、この短篇集に入っている13作品は、読むとなんとなく最近の作品での「既読感」あったりします。
ということは、慣れ親しんでいる現代のSF作品にも、大きな影響を与えていると感じます。

ちょっとお約束なのかもしれないのですが、「階段」を歩く際に、またふと思い出してしまうなぁと感じました。

「幸福の代償(Cost of Living)」
何気ない作品ですが、「未来に生まれる世代の生活をよくする」ために、「未来に生まれる世代の収入を抵当にして借り入れを行う」。

なんと、SF作品としても、そして現代の私たちの政治にも刺さる「国家債務問題」を、こんなにわかりやすくSF作品として描いているとは。
1953年の作品で、70年前に日本の財政問題・年金問題を予測していたかのような作品です。

きっかけは「善意」ですが、「同意はとっていない(まだ生まれていない)」が行きつく先は。。。
70年前の作品ですが、切れ味鋭いです。

「体形(Shape)」
「階級社会」を批判した作品で、こちらも1953年ですから、自由主義社会と共産主義社会を描いた作品ですが、「階級」なるものに対しての鋭い視線が素晴らしい。固定された「階級」が、人間の生来の感覚と大きくコンフリクトしていることが描かれている。
「一律平等」ではなく、「自分の意志でつかみ取ること」の素晴らしさを突いている。これも、現代の読者にとっても刺さる作品です。

「時間に挟まれた男(The Impacted Man)」
「悪魔たち(The Demons)」

この2作品は、ちょっと「階段」を見るとふと思い出してしまう作品になると思います。
突いているところはシンプルですが、オモシロい。
なんか、現代の多くの作品に影響を与えていると感じました。

もちろん、70年前のSF作品なので古めかしいところはある。
サイエンスとテクノロジーは大きく変わってしまった。
でも、人間は大きくは変われていない。
その為に、技巧を凝らした設定が今も読ませてくれる短篇集になっています。

まさに良品です。

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