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打ちのめされるような読書「こびとが打ち上げた小さなボール」

<文学(231歩目)>
この作品に出遭えなかったら、と思える作品でした。

こびとが打ち上げた小さなボール
チョ・セヒ (著), 斎藤 真理子 (翻訳)
河出書房新社

「231歩目」はチョ・セヒさんの貧困に抗う渾身の短篇集。

帯にチョ・セヒさんの「この悲しみの物語がいつか読まれなくなることを願う」との言葉。
韓国で300刷を超えるロングセラーとのこと。
韓国の人に読まれる作品って、どんな作品なのかな?と考えて手に取りました。

読んで思ったことは、チョ・セヒさんを亡くなってから知ったことがとても残念だったことです。

朴正熙軍事政権下の圧政に苦しむ、韓国の貧困層を主人公に描かれた連作短編集。
この作品の短篇はどれも水準以上ですが、一篇を読むよりも、全体で理解した方がいい作品だと思いました。

どの短篇も刺さる言葉がある。

「貧困は悪なんだ」
「行動し、発言しなくては何も変わらない。」
「僕たちは言葉を持たないためにこんな目に遭っている。これは一種の闘いなんだ」
「ほんとうのことを言ったために葬られてしまう人たちがいる」
「貧しさの連鎖」
「なんでまともな人がこんなに少ないんだろう?」
「知らずにいた人たちすべての罪だ」
「生きることは戦争だった。そしてその戦争で、僕らは毎日、負けつづけた。」

舞台は半世紀前の話。でも、現代の話として十分通用するところがロングセラーになっているのだと思う。

四方田犬彦さんの解説に、新たな知識を得た気持ちになりました。

こんな筆力はなかなか読めない作品です。

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