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良質なタイムトリップ「嘘と正典」

若いみずみずしい才能により、良質なトリップを楽しむ。

嘘と正典
小川 哲 (著)
早川書房

「40歩目」はSFの「1歩目」で紹介した「ゲームの王国」を書かれた、小川哲さんの短篇集。手抜きが一切ない作品集です。

小川さんの作品は、岩波文庫の赤を読みふける時の読後感に似ています。

おそらく、半端ない読書量でポケットにネタが大量に入っているのだと感じています。

どれもすげーのですが、特に3篇を紹介します。

「魔術師」
マジシャンが、SFになるんだ。。。とガツーンと来た作品。
彼の作品では、安直に「種明かし」がSFになるのではない。全体を読むと「時間SF」なのですが、究極に極めたい主人公の「語り」と「驕り」が絶妙なバランスであり、純文学とも言える。

短篇なのに、ものすごいテクニックに「いいね!」でした。

「時の扉」
「時間SF」なのですが、歴史と愛を痛切に感じる。こちらもSF的な装置なしで、文学的なアプローチで読後に素晴らしいSF作品を読んだ気にさせる。

これも「いいね!」です。

「嘘と正典」
「時間SF」の王道の歴史改変をめぐる作品。この作品では、孤独なエンジニアがいい味だしている。

あっという間に読めるが余韻は深い。まさに「いいね!」です。

短篇集なので、移動時間にもサクッと読める。しかし、それぞれの短篇がとても丁寧。

この6作品だけで、一週間の通勤は脳の刺激の時間に変えることが出来ます。
おススメです。

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