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酔っぱらいSF「酔どれ列車、モスクワ発ペトゥシキ行」

<SF(41歩目)>
酔っぱらって、この酔っ払い文学を読むと「SF」により社会風刺が素晴らしい武器となることがわかる。

酔どれ列車、モスクワ発ペトゥシキ行
ヴェネディクト エロフェーエフ (著), 安岡 治子 (翻訳)
国書刊行会

「41歩目」はロシア文学の伝説の作品。これは「呑み鉄(鉄道オタクで、飲みながら鉄道旅を楽しむオタク)」の話ではありません。(笑)

そして、ここまで書いていいんかい!?と思うくらいの体制批判を「SF」というカテゴリーで発揮した記念塔。いやはや、すげーです。

ヴェネディクト・エロフェーエフさんは、ロシア的には「ロシア文学者の伝説の巨匠」の一人です。その為に「SF」ではなく「文学」だろう!との声もある。でも敢えて「SF」に入れました。

この物語は「クレムリン、クレムリン、と誰もが言う。クレムリンのことはあらゆる人から話には聞くが、自分で実際に見たためしは一度もない。もう何度となく、一千回も酔っぱらって、それとも二日酔いで、モスクワを北から南へ、西から東へ、端から端まで突っ切ってみたり、ただ無茶苦茶に歩き回ったりしたのに、クレムリンはただの一度も見たことがない。・・・」でスタートです。(笑)

これって、私も中央線沿線に暮した時期が長かったのですが、「国会議事堂」と言っても、行ったことは小学校の遠足の時のみ。

その後は、大手町や神田で飲んで、中央線(オレンジの電車)を西へ向かい、何故か高尾で気づく。あるいは、何故か折り返しになっていて、途中駅で乗り越したと思って慌てて下車して、反対側の電車に飛び乗ると更に遠くに運ばれていく。。。

あまりの自己嫌悪で総武線(黄色い電車)に乗って帰ると、気づいてい見ると何故か船橋にいる。。。
散々、若い頃にやらかしたので、そんな「笑える」「おバカな」作品かと勘違いしてしまいました。

この「酔っぱらい」作品からは、からめとられて身動きできないオジサンの心境が見事に表現されている。ここにSF感覚が入って、ブレジネフが弾圧していた(地下出版)時代から、「酔っぱらい」の描写にプッと吹き出しながら、SFでがんじがらめの人生の悲哀を見せる。

旧ソヴィエト時代の地下出版のベストセラー(題名と異なり、完成度が極めて高い)から、苦しみに満ちた日常からの逃避って、カンタンじゃないこと。

逃避のための「飲酒」も、日常が苦し過ぎると「逃避」にならずに「苦行」になること。(笑)
これが見事に描き出されています。

社会が閉塞すると、オジサンの飲酒も大変だ~~~

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