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詩「幻」




今日を生きる為に息をする
私の周りに咲いているのは不自然な花々
拍手と笑顔も私に向けられたものじゃない
私に差し出す人は ほとんどいない
できれば 気付きたくなかったな
ずっと夢の中を生きていたかった

モヤがかかった毎日の中で
強すぎる光を見た
今まで誰にも感じたことがなかったから
手が震えた
掴みたくて前に出すけど
振り払われそうで怖かった
この世のものは私の身体を
呆気なく通り過ぎて行くだけ

使い古された常套句を新鮮な響きに変える
憂鬱な朝に光を与える
萎れ切った花に命を宿す
何も無い空間に意味を持たせる
嘘の感情を本物だと錯覚させる
シナシナな自分を奮い立たせて知恵を働かせる
時に自分を押し殺して周囲を輝かせる
脳のチャンネルを合わせ
共有し
観客の感情の波を誘う

私が表現したい先には
いつも貴方が居た
貴方の瞳は私を見つめるけど
心は ふらふらと宙に浮いていた
絶えず 私では無い誰かを見ていた
ズシンと重い手の感触だけが本当だった

私の人生
誰も彼も ふわふわと幻

いつも
私だけが
毎日、毎日、
一生懸命に息をしていた
どの世界でも
生きようとしていた
いつでも そう
私だけが

今日も私の身体を
掴めない幻達が行き過ぎる



知ってるよ
知ってるよ
心は叫ぶ

本当のあんたを
誰も知らないあんたを
いきがってるあんたを
過信しすぎてるあんたを

知ってるよ
知ってるよ
心は叫ぶ

私は知らないフリをして
大切なあの人のことも分からないまま…

そうやって
色んなことが立ち止まって
私は私のままでしかいられないんだ

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