失われる
まっすぐな薄い唇を
静かに結び押し黙る
靴についた泥に気を取られ
あなたが知ることはないが
前とはなにもかもが違う
あなたが怒りで声を張り上げ
自分を抱きしめているとき
花は静かに変わってしまう
前のように美しく見えても
根は少しずつ腐っていく
ここにいることに
意味はなくなる
いてもいなくても
もう構わない
口には出さないだけ
寂しさに震え
涙で朝を迎えたあの日
今はそれも懐かしい
もう何もないんだ
土は何も与えない
屈託なく笑い声を上げ
子犬のようにしがみつき
疲れて眠りについた
あれはもう遠い昔
今はただ呆けた顔
あったのかなかったのか
今はもうどうでもいい
虚空の一点を見つめ
すべては枯れて砂になり
もっと深い場所へと零れる
それでもまだ
微かに光るあの小さな粒
ああでももう最後だろう
滲んで見えなくなる
もうすぐだ
失われる
ああ時が過ぎれば
時さえ過ぎれば
身体を風が吹き抜け
草が鼻をくすぐる
雲が髪の毛をかすめ
雨粒が掌を満たす
現在と過去は同じ意味で
未来という言葉はもうない
ずっといることも
消えてしまうことも
何もかもが好きにできる
すべてが許されている
すべてが許されているんだ
失われる
永遠に失われる
#詩 #創作 #失われる #唇 #悲しみ #怒り #声 #花 #根 #寂しさ #涙 #朝 #土 #子犬 #眠り #虚空 #砂 #零れる #最後