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知っておきたい森田療法 ー「あるがまま」を受け入れる


はじめに


森田療法は、日本の精神科医・森田正馬(もりた しょうま)によって開発された独自の精神療法であり、不安障害や神経症の治療に用いられることで知られています。この療法は「あるがまま」を受け入れることを基本理念とし、不安や恐怖を排除するのではなく、それらを受け入れながら適応していくことを目的としています。

森田療法の基本理念


森田療法の中心的な考え方は、「あるがままの受容」と「目的本位の行動」です。これは、西洋的な認知療法のように思考を変えようとするのではなく、不安や葛藤をそのままにしながらも、行動を変えていくことで、結果的に症状が軽減されるというものです。

1. あるがままの受容

一般的に、人は不安や恐怖を感じると、それを無理に取り除こうとします。しかし、森田療法では、不安や苦痛は本来、自然な感情であり、排除するものではないと考えます。「不安があっても良い」「そのままの自分で生きていく」という姿勢が重要です。

2. 目的本位の行動

症状や感情にとらわれるのではなく、「今、自分ができることをする」ことが大切です。不安や苦しみを抱えたままでも、日常生活を続けることで、次第に適応できるようになります。

森田療法の治療プロセス


森田療法は、入院療法と外来療法の両方で実施されますが、以下の4つの段階を経て治療が進められます。

1. 絶対臥褥(がじょく)期

入院治療の場合、患者は最初に何もせず、ただ静かに過ごす期間が設けられます。この期間は1週間程度で、心の中の葛藤を受け入れる準備をするためのものです。

2. 軽作業期

次に、少しずつ軽い作業(掃除や日記を書くなど)を行います。ここでは、「考えすぎず、手を動かすこと」に重点が置かれ、行動を通じて自然と適応力を高めていきます。

3. 作業期

本格的に作業を行い、社会生活に戻る準備をします。不安や症状があっても、それにとらわれず行動することを実践します。

4. 社会復帰期

最後に、治療で学んだ考え方を日常生活に取り入れ、社会生活に戻ります。不安を抱えながらも、目的に向かって行動することが重要です。

森田療法と他の療法との違い


1. 認知行動療法(CBT)との違い

認知行動療法(CBT)は、思考の修正に焦点を当てるのに対し、森田療法は思考を変えるのではなく、「そのままにしておく」というアプローチを取ります。不安や恐怖に対して抵抗せず、行動を重視する点が大きな違いです。

2. 精神分析療法との違い

精神分析療法は、過去の経験や無意識の要素を探ることで症状の改善を目指しますが、森田療法では過去を深く掘り下げることはせず、現在の行動に焦点を当てます。

森田療法の現代的意義


現代社会では、不安障害やうつ病が増加しており、多くの人が「不安をなくすこと」に注力しがちです。しかし、森田療法の視点に立つと、不安を無理に消そうとするのではなく、「あるがまま」に受け入れながら生活を続けることが、結果として心の安定につながることがわかります。

また、ストレス社会の中で「完璧を求めるあまり、動けなくなる」という人が増えている中、森田療法の「とにかく行動する」というアプローチは、適応力を高める方法としても有効です。

まとめ


森田療法は、「不安や恐怖をなくすのではなく、そのまま受け入れながら行動する」というユニークな心理療法です。認知の修正ではなく、行動の変化を通じて適応力を高めるこの手法は、現代のストレス社会においても大きな意味を持っています。

不安や葛藤を抱えることは、決して異常ではありません。それを受け入れながら、日常生活を送り続けることこそが、心の健康につながるのです。

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