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小説「冷血青年」

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オリジナル小説「冷血青年」を投稿します。 ~あらすじ~  旅人のリチャードが好意により馬車に乗せてもらうと、その馬車が盗賊に襲われてしまう。盗賊を追い払う際に協会の狩人(ハンタ…
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記事一覧

エピローグ

 明くる日の朝、6人の教会の狩人(ハンター)たちがケネス・オルブルームの元居城に辿り着き…

海月大和
2年前

21.血が裁く

「私を殺す……?」  名指しで殺害予告を受けたケネスは、しかし徐々に平静を取り戻していっ…

海月大和
2年前
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20.覚悟が届く先

 静かだった草原はいまや騒乱の場になっていた。ぎこちない雄叫びを上げて斬りかかってくる男…

海月大和
2年前
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19.反旗

 リチャードは子供の頃のことを思い出していた。 「どうしたんだい? その顔の傷」  親代…

海月大和
2年前
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18.蛮勇と呼ばれるもの

 その日、ケネス・オルブルームのメイドの1人であるローラは荷車を馬に引かせ、主人が支配し…

海月大和
2年前
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17.口惜しき現実

 リチャードから大人二人分ほど距離を取って止まったデリックは、刺すような鋭い怒りのこもっ…

海月大和
2年前
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16.罪と涙

 しばしの沈黙に鳥の鳴き声が割り込んだ。ちらと鳴き声がしたほうを一瞥して、リチャードは軽く息を吐く。 「ケネスを殺したら、眷属になった全員が死ぬ。それは知っていますか?」「知ってます。村長さんが皆を集めて言ってました」  エルシーの視線は揺らがない。己を殺せと言う彼女から目を話さず、しかしリチャードは眉根を寄せて居心地の悪さを表した。 「それを承知で頼むのですか。何をそこまで思い詰めているんです?」  リチャードに見えるのは彼女の罪悪感。自分が死ぬと分かっていてもそれ

15.化け物は悪か?

 ダレンが目を瞬かせた。 「なんですと?」  いましがた聞いた言葉が信じられないといった…

海月大和
2年前
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14.裏切りの提案

 監禁されていた女性を助けた翌日のこと、リチャードは森の中を散策してくるとメイドに伝え、…

海月大和
2年前
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13.彼の信条

 リチャードとケネスが血の祝杯を挙げてからさらに2日が経った。二階奥の扉の前でリチャード…

海月大和
2年前
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12.背徳的な飲み物

「リチャード殿は運がいい」  二階奥の錠のある部屋の前で、鍵を開けるのを待つわずかな間に…

海月大和
2年前

11.人外たる所以

 リチャードがケネスの屋敷に来てから2日が経った。基本的に吸血鬼の活動時間は夜である。日…

海月大和
3年前
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10.暗闇に血は流れる

 メイドとアドルフォが出ていって数分後のこと。外から誰かの声が聞こえてきた気がした。聞き…

海月大和
3年前
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9.時には仮面を被って

 村長の家を後にしたリチャードは一軒の屋敷に案内された。アントニーが貴族の別荘と言っていた丘の上にある建物は、実のところは吸血鬼ケネスの根城であった。本当のことを言うわけにはいかなかったため、アントニーは当たり障りのない嘘で誤魔化したのだろう。  一通り屋敷を案内されたあと、リチャードはケネスとともに夕食をとることになった。二人で囲むには広すぎる食堂に通され、席に付く。やや小ぶりなシャンデリアが見下ろす部屋の中央、リチャードとケネスが対面で座るテーブルは白いクロスが掛けられ