教育政策の5ヵ年計画、パブコメ実施中。情報教育の対応策は?
こんにちは!みんなのコード政策提言部の田嶋です。
みんなのコードは公教育におけるテクノロジー・情報教育の拡充を推進するNPO法人です。私は学校現場の声を官公庁や政治に届け、次世代の教育のありたい姿を提案するという役割を担っています。
突然ですが、みなさんは「パブコメ」(パブリック・コメント)という単語を聞いたことはありますか?
上に引用した政府文章を参照すると、パブコメは「国は、重要なことを決める前に国民の意見を聞きましょう。国民の権利や利益を守れるように努めましょう」という制度と解釈できますね。
さて、1月25日(水)18時まで「次期教育振興基本計画」についてのパブコメが行われています。今回はこの計画の中の情報教育に関する部分についてご紹介します。
この記事でお伝えするポイントは
教育振興基本計画とは?
教育基本法は、「教育の憲法」などと言われるとおり、日本の教育の理念や原則を定めたものです。この理念を実現するために、国がどのようなことをするのかを総合的に定めているのが「教育振興基本計画」です。
5年ごとに新しい計画が策定されており、現在(第3期)教育振興基本計画は2018-2022年度にやることが書かれています。国が策定した教育振興基本計画を基に、県や市町村もそれぞれの教育振興基本計画を作成することが求められることになります。つまり、国の基本計画はそれぞれの地方自治体の教育計画にも大きな影響を与える、非常に重要なものとなるのです。
今回パブコメにかけられているのは2023-2027年度に国が何をやるか、その成果をどうやって測るのかを決めたものです。
もちろん、まだ策定前の計画ですので今回のパブコメのタイトルは「次期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過に関する意見募集の実施について」となっています。
次期教育振興基本計画は、上図の16の目標に分けられています。日本の教育全般についての計画ですので、幼児教育から高等教育(大学)、生涯教育、スポーツ・文化活動などあらゆることに言及されています。全部に目を通すのは大変ですが、興味がある目標・施策例があればその項目だけでもぜひ読んでみてください!
情報教育の悩みは、事例の蓄積で解決?
私たちの活動領域である情報教育に関して、目標11「教育DXの推進・デジタル人材の育成」に着目してみます。
この目標の中で、小中高の情報教育に関連する施策として
1人1台端末の活用
児童生徒の情報活用能力の育成
教師の指導力向上
などが掲げられています。
前提として、次の5年間でICTの活用が「日常化」することを目指すと書かれており、上記の3つの施策の具体例として掲げられているのは以下のとおりです。
1人1台端末を用いた効果的な実践例の創出・横展開
情報活用能力育成のために…優れた事例の創出を図る
情報活用能力育成のために、ICTの活用事例提供
私はこの内容を見て、具体策が限定的であるように思いました。
極端な見方をすれば「1人1台端末が整備されたことによって、地域・学校ごとに優れた取り組みが生まれている。その事例を全国に展開すれば、他の学校でもICTの活用が日常化するはず」と言っているように感じてしまいます。
もちろん、優良事例から学び、地域・学校ごとに工夫をするという姿勢は重要です。ですが、2020年度以降のプログラミング教育の必修・拡充化の中で、現場が困惑していることは、他の事例を知ることで全て解決するでしょうか?
実際、文科省からは小学校での必修化に先駆けて「小学校プログラミング教育指導事例集」、昨年には「小学校プログラミング 実践研修会実践事例等」などが公開されていますし、経産省も「STEAM ライブラリー」という1人1台端末が整備された環境下で使える、コンテンツと実践例を掲載したページを公開しています。
私たちは、これらの取り組みにもかかわらず、学校でICTの活用が「日常化」されていない点に注目しました。優良事例の継続的な収集や活用事例の共有のほかに出来ることはないのでしょうか。
私たちが届けたい対応策
このような課題意識のもと、私たちが学校現場で見聞きしている声を届けるため、以下のようにパブコメを送る予定です。
(目標11に対して)
掲げられている施策が、やや事例頼み、つまり「現場任せ」に寄っているのではないかと感じます。ICTの活用がなぜ学校現場で「日常化」されていないのかと向き合う必要があるのではないでしょうか。
具体的には、小中高の情報に関する学びが分断されていることで子供たちが限られた時間しかICTを使用できない・身につけられる情報活用能力が地域・学校ごとに差が生まれているという土台を見直す必要があると考えます。
さらに、各学校段階での接続性の問題もあります。仮に小学校でプログラミング等の学びが充実していたとしても、中学では技術分野の一部で扱われるにすぎず、結果的に高校「情報」で知識を詰め込むことに終始することが予想されます。
現場で生まれる事例の蓄積に留まらず、国として、どのような教科等の枠組み再編が妥当か、育成すべき資質・能力を明文化すべきか、適切な評価の在り方は何か、といったことを、あわせて検討されることを望みます。
パブコメの送り方
情報教育についても、その他の部分も、自分の声を届けてみようかなと思った方!以下の2つの手順で国に意見を送ることができます。
手段1
「次期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について(報告)」の気になる部分をチェック
こちらのフォームから必要事項を記載して送信
※目標11と12、二つについて意見を送りたいという場合は、2回に分けて送る必要があります
手段2
「次期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について(報告)」の気になる部分をチェック
こちらのページにアクセスし、意見募集要項に目を通して、「意見募集要項(提出先を含む)を確認しました。」のチェックボックスにチェック
意見と必要事項を入力して送信
国の文章というと、「堅苦しくて何を言っているかわからない!」と投げ出してしまいそうになります。
ですが、次の教育政策を決定するために必要なのは、情報教育に関わる一人一人の想いではないかと考え、パブコメを送ることにしました。
ぜひ、少しだけでもいいので、すべての教育の土台となる次期「教育振興基本計画」に目を通してみてください!
ここまでお読みくださりありがとうございます。
みんなのコードは「子どもたちがデジタルの価値創造者となることで、次の世界を創っていく」をビジョンに掲げ、2015年の団体設立以来、小中高でのプログラミング教育等を中心に、情報教育の発展に向け活動し、多くの方からのご支援をいただきながら取り組んでまいりました。
もし、私たちの活動に共感いただき、何かの形で応援したい、と思ってくださった方は、みんなのコードへの寄付をご検討ください。
引き続き、21世紀の価値創造の源泉である「情報技術」に関する教育を充実に向けて、これからも取り組んでいきます。
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