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芦沢さんとぼく

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大学を卒業し、相談員となった田中さん。職場の先輩である芦沢さんの面接に同席すると、発達障害の診断を受けた哲也さん(ぼく)と出会う。哲也さんのためにどうにかしたいと考える田中さん。…
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記事一覧

芦沢さんとぼく 第1話

(あらすじ)  福祉系大学を卒業し、相談員となった田中元気は、人助けをしたいと希望に燃え…

芦沢さんとぼく 第2話 ぼくのどの辺が優しいですか?

 県職員になり、3週間が経過した。初めの頃は緊張していたが、徐々に人にも慣れた。ただ、一…

芦沢さんとぼく 第3話 強い人になりたいです。

 評価をしない。計画を立てない。ただ、関係を築く。先輩の芦沢さんはそう言っていた。関係を…

芦沢さんとぼく 第4話 もう話したくないです

 県職員になり、私がしたことは、英語の勉強、100mダッシュ・・。一体、何をしているのだ…

芦沢さんとぼく 第5話 気をつかうって何ですか?

 ハローワークの出来事があった夜、私が自分がしたことを振り返ってみた。哲也さんが約束なく…

芦沢さんとぼく 第6話 僕の夢は世界平和

 哲也さんに面接の同席を許可されて以降も、哲也さんと芦沢さんの面接は変わらなかった。哲也…

芦沢さんとぼく 第7話 こんにちは。そしてお帰りなさい

 私が哲也さんの面接に同席するようになり、半年が過ぎた。過ぎたあとも私は哲也さんの面接に同席した。自分のために、これからどうなっていくのか見ていきたい。そう思い、お願いした。年をまたぎ、哲也さんの通信制高校の卒業も決まった。嬉しいはずが、1月に入ってからの相談は卒業後の不安を哲也さんが口にするようになった。  卒業したら何をしたいですか?芦沢さんが聞くと、哲也さんは「警察官になりたい」、「ビルの管理人になりたい」、「消防士になりたい」とコロコロ違う職業を希望した。その都度、芦

芦沢さんとぼく 続き

 私の名前は田中元気。福祉系の大学を経て、相談員の仕事を始め、1年が経過しました。1年は…

芦沢さんとぼく 第9話 グレイ、好きでしょう

 毎朝、歩いて出勤する。スマホとワイヤレスイヤホンを繋ぎ、好きな曲を流しながら、歩く。私…

芦沢さんとぼく 第10話 辛い時、辛いと言えるかな?

 哲也さんに「芦沢さんと話すからいいです」と電話を切られ、初めて哲也さんが芦沢さんのとこ…

芦沢さんとぼく 第11話 辛いです

 「辛い時は、辛いとはなかなか言えないですよ」、芦沢さんはそう話していた。アクアタイムズ…

芦沢さんとぼく 第12話 寄り添うこと

 泣いた。大人になって初めて泣いたのかもしれない。自宅に帰ってからも、ずっと今日の出来事…

芦沢さんとぼく 第13話 転機

 寄り添うこと。それを考えていたら、分からなくなった。私は大学で福祉を学んだ。専門職は相…

芦沢さんとぼく 第14話 迫られる決断

 優さんが話した。私は目の前で起こった光景に私はただただ驚いていた。私が面談した時、優さんは何も話さなかった。私の前では心配で一杯だった母親は、少しホッとしたような表情を浮かべて、帰っていった。何が起こったのだろう?芦沢さんは何をしたのだろう?    優さんとお母さんの姿が見えなくなり、面談室に私と芦沢さんの二人になった。  「田中さん、お疲れ様でした」  「お疲れ様でした。芦沢さん、芦沢さんは何をしたんですか?」  「何って何ですか?」  「私が前回、お話をした時に