芦沢さんとぼく 続き
私の名前は田中元気。福祉系の大学を経て、相談員の仕事を始め、1年が経過しました。1年は過ぎてしまえばあっという間。仕事を始めた頃、私は相談員の仕事はこうでなければいけない。そう思っていました。相談してくれる相手ではなく、自分のことを中心に考えていました。その結果、相談相手の信頼を裏切る行動をし、不信感を抱かせることになってしまいました。
私にこの1年、色々なこと考えるキッカケをくれたのは、相談員の先輩である芦沢さんと芦沢さんのところに相談に来ている哲也さん。芦沢さんは哲也さんと英語の勉強をし、運動し、哲也さんが話すことを否定せず、ただただ付き合っていました。私には芦沢さんの行動が専門職の仕事をしていないように映りました。専門職なら、哲也さんを評価し、必要なことを提示し、アドバイスをする。それをせず、哲也さんの話す通りに動く芦沢さんは専門職の役割を放棄している。言い方が良くないですが、遊んでいるように思えました。
だから、私は芦沢さんにもっと専門職の仕事をしなくて良いのですかと聞いていました。でも、そう話すと、専門職の仕事って何ですか?それが誰のための仕事ですか?と逆に聞かれ、私が答えに窮するようになりました。あの時は芦沢さんが自身の行動を後輩から指摘され、屁理屈を言っているように感じていました。でも、時間を経て、冷静になって考えてみたら、専門職の仕事と思っているのは私であり、それを哲也さんが求めているかは分からないと思いました。でも、求めていることだけやれば良いのか・・、考えても答えは出てきませんでした。
そこで考えが止まっていた時に哲也さんがハローワークに仕事を探しに行く行動を取り、私はそのまま行動すれば、哲也さんにとって危ない、良くないと思い、哲也さんの了解を得ずにハローワークに連絡を入れ、話を止めるという行動を取りました。結果として、哲也さんからの信頼を失いました。
元々、私に対して哲也さんは信頼していたのかと言えば、怪しいところです。でも、信頼って何なのかを考えるキッカケになりました。芦沢さんは否定しない。哲也さんと付き合う。ある程度のところまで行き、哲也さんが納得すると、話は次に進んでいく。芦沢さんは、困っている時に哲也さんが話をしてくれるか否かだけのためにやっていると話していました。哲也さんが家を離れ、行方が分からくなった時、芦沢さんのところには連絡を入れ、そして哲也さんは戻って来た。もしかしたら、それが信頼なのかもしれない。今の私はそう思うようになりました。
1年を経ても、芦沢さんと哲也さんの関係は変わっていない。その関わりの経過を私も一緒に見ていきたいと思います。皆さんもぜひお付き合い頂ければと思います。
変わらない関係のその後・・。
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