対話を届け、声を伝えるプロジェクト   つむぎ

ソーシャルワーカー|精神保健福祉士・社会福祉士・ジョブコーチ|単著「ひきこもりでいいみたい」「ふすまのむこうがわ」共著「ソーシャルワーカーになりたい」|「ソーシャルワーカーのミカタ」(生活書院)発刊|環境と折り合うことに悩む人たちの話を聴いています

対話を届け、声を伝えるプロジェクト   つむぎ

ソーシャルワーカー|精神保健福祉士・社会福祉士・ジョブコーチ|単著「ひきこもりでいいみたい」「ふすまのむこうがわ」共著「ソーシャルワーカーになりたい」|「ソーシャルワーカーのミカタ」(生活書院)発刊|環境と折り合うことに悩む人たちの話を聴いています

マガジン

  • 芦沢さんとぼく

    大学を卒業し、相談員となった田中さん。職場の先輩である芦沢さんの面接に同席すると、発達障害の診断を受けた哲也さん(ぼく)と出会う。哲也さんのためにどうにかしたいと考える田中さん。哲也さんの言動に付き合い、何もしていないように見える芦沢さん。芦沢さんと「ぼく」と話す哲也さん、そしてそれを見ている田中さんの、ものがたり。

  • ステイホームーコロナに揺れる、ひきこもごもな生活ー

    コロナ渦のひきこもりについて、支援の現場から見えてきたことについて報告します。

  • ソーシャルワークのまなびかたー原因と結果のあいだの話―(仮)

    原因と結果の話が溢れ、それを繋ぐ話が抜けている。そんな問題意識から、関わってきた事例のプロセスを紹介し、改めてソーシャルワークを考え、まなぶ機会になれたら良いなと思います。

最近の記事

困った人のこまりごと

 2年程前にそんなタイトルの文章を書きました。まだ、コロナの感染対策が行われていた時期。制約された環境下で、書こうという気持ちが湧き、書いた文章。月日が経ち、今回、新しい文章を加え、形にする作業を進めています。  これまで、私はソーシャルワーカーとなり、経験を重ねる中で、ある程度の期間が経つと、実践を文章にまとめることをしてきました。 ①「ソーシャルワーカーになりたい」で書いた原稿は、福祉系大学に進学し、スーパーバイザーとなる恩師と出会い、大学卒業後に非常勤の仕事を掛け持

    • ひきこもり女性がひきこもりに至るプロセス

       昨年度から取り組み始めました。文献をまとめる。アンケートを取る。インタビューをお願いし、インタビューを行う・・。やることを並べれば、簡単そうに見えてしまうが、実際にやってみると、自分が思い描いた通りには進んでいきませんでした。一番、難しかったのは、アンケートやインタビューのお願いをしても、なかなか協力して頂ける方が集まらなかったことです。時間ばかりが過ぎる中で、気持ちだけが焦るばかり。当初は今年の夏ごろにはまとめたいと思っていましたが、時間はどんどん過ぎていきました。  

      • 芦沢さんとぼく 第18話 葛藤

         哲也さんからの電話はその後、1週間続いた。平日の夕方、殆ど決まった時間に哲也さんは芦沢さんに電話をしてきた。「教えることは何もない」と芦沢さんに話していたのに、なぜ?そして、電話をかけてくれば、芦沢さんが何もしておらず、自分の力でぼくはやっていると話し続けた。 「芦沢さんですか?」 「はい。芦沢です」 「今日も、僕は仕事に行けました」 「そうですか」 「僕ができないと思いましたか?」 「いえ、私は哲也さんと一緒にいないので、哲也さんができたか、できなかったかを確

        • 40年ぶりに出る社会

           中学生の頃からひきこもる生活を送る。月日が経ち、本人は50代後半に。ひきこもる期間は40年以上。そんな本人が扉を開け、外に出てきた。親御さんも年を重ね、80歳を超えていた。  車から出る廃棄ガスに頭がクラクラ。人ごみにも酔ってしまう。幼き頃に見た自宅付近の状況は様変わり。まさに浦島太郎の状態。見えるもの全てが珍しく、少しの時間でも、外に出て、歩くと疲れてしまう。  ひきこもりの相談。本人と会えない、話ができない期間が長くなると、親は本人のことを想像するしかなくなる。親自身も

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        • 芦沢さんとぼく
          18本
        • ステイホームーコロナに揺れる、ひきこもごもな生活ー
          6本
        • ソーシャルワークのまなびかたー原因と結果のあいだの話―(仮)
          5本

        記事

          第4回 かぞくのカタチのご案内

           8月より開催してきました「かぞくのカタチ」の第4回を令和6年10月13日(日)の15時00分~16時30分の時間帯に開催します。費用は無料。当日の画面はオフにして頂き、名前もニックネームなどの参加で大丈夫です。申し込みは以下のGoogleフォームよりお願いします。申し込みの際には、ZOOMのIDなどをお送りするアドレスを記載して下さい。申し込み後にIDなどが届いていない場合は、お手数ですが、labo.tumugi@gmail.comまでお問い合わせ頂ければと思います。申し込

          支援者向けの会「支援のカタチ」のご案内

           8月より、「かぞくのカタチ」と題したオンラインの会を開催しております。元々はこれまでになかった形の家族の教室を開催してみたいなと漠然と考え、仮名で、画面オフで参加頂き、聴くに専念した「ラジオのような会」にしたいと思い、そのような形でこれまで3回、開催してきました。  お陰様で、毎回10~15名ほどの方に参加頂いており、反響も頂けるようになりました。ありがとうございます。主な対象として、家族を想定していましたが、最初の頃は参加者の半分が支援者、残り半分を家族、当事者の方が占め

          支援者向けの会「支援のカタチ」のご案内

          かぞくのカタチのご報告

           先月から「かぞくのカタチ」というタイトルでオンラインの会を開催しています。2~3週間に1回、土曜日に開催しています。最初は昨年から始めた「つむぎ」の取り組みの報告だけで終わる予定が、主に家族を対象にオンラインの会ができないかとの考えが浮かび、先日の開催で3回を数えました。  オンラインの会とはどのような会なのか?対面で行われている家族会や家族教室をオンラインでやるのかと言えば、違います。どこが違うのかと言えば、最初に私は1時間弱、家族に向けて伝えている内容を話し、その後に質

          芦沢さんとぼく 第17話 おりあう

           哲也さんから芦沢さんに電話が来たのは、哲也さんが沖縄に行った3日後だった。哲也さんからの電話を取った私はびっくりした。何で哲也さんが電話をしてきたのかが分からなかった。あれだけ芦沢さんに対して言っていたのに、何で?私はそう思った。「哲也さんからの電話です」と芦沢さんに声をかけると、芦沢さんは「やっぱりな」と独り言のように言い、受話器を取った。「やっぱりな」とはどういうことだろう?    「こんにちは」    「こんにちは。芦沢さんですか?」    「はい。そうです。」  

          ひきこもり女性に関するアンケートのご依頼

          このページをご覧頂き、ありがとうございます。 ひきこもりは男性の問題との社会の認識がある中で、女性のひきこもりもいること、思っている以上に数が多いことが国の実態調査の結果などをもとに言われるようになってきました。ですが、それを補うような実態や本人、家族の声はなかなか表には出てきていない。出てきていないから対策も立てられない状況にあるように感じます。また、女性と言っても、年齢によって状況は変わってくるように感じます。広く女性、そして本人だけでなく家族からも声を集め、まとめ、社

          ひきこもり女性に関するアンケートのご依頼

          芦沢さんとぼく 第16話 一緒にやりましょう

           哲也さんが沖縄に行くと話した日を迎えた。昨日から哲也さんは本当に沖縄に行くのか、芦沢さんはどうするのか、気になっていた。家にいても落ち着かず、今日はいつもよりも早く出勤した。早めに着いて誰も来ていないと思っていたら、芦沢さんは既に来ていた。    「おはようございます」    「おはよう」    「芦沢さん、今日、早いですね」    「そうかな。今日、道がすいていたからかな」    「私は哲也さんのことが気になって、早く来たのかと思っちゃいました」    「哲也さん、今日だ

          芦沢さんとぼく 第16話 一緒にやりましょう

          つむぎについてのご案内

          「対話を届け、声を伝えるプロジェクト ~ つむぎ ~」 ソーシャルワーカーの芦沢茂喜と申します。2013 年より、不登校、ひきこもりの相談 を受けてきました。家族からの相談、本人との面談、集団活動、就学、就労支援、訪問な ど、下は 10 代、上は 60 代をこえる方のお話を聞いてきました。  これまでお話は私がいる事務所に来て頂くか、私が本人又は家族がいる場所(主に自宅) に行く形を取ってきました。ただ、事務所に来られない方、自宅に来られるのは嫌だと感じる方の話は伺えない状

          芦沢さんとぼく 第15回 向き合うということ

           「自分と向き合うことから逃げますか?」、そう聞かれて、逃げたくないと思った。でも、逃げたいとも思った。何でそんなことを芦沢さんは言うのかと思った。逃げるか否かの話がなくても、仕事はできる。仕事ができるのに何で・・。同じ思いが出ては消えてを繰り返し、結局自分の気持ちを定めることができなかった。私はどうしたいのだろう?  芦沢さんから聞かれた問いの答えを出さない、出せないまま、時間だけは過ぎていった。今日は哲也さんが来る日だった。この2週間、芦沢さんのところには哲也さんから頻

          芦沢さんとぼく 第15回 向き合うということ

          かぞくのカタチ 第3回のご案内

           親と子どもはどのように関わったら良いのだろう?今後、どのような家族のカタチを求めていったら良いのだろう?そんなことを考えるオンラインの会を開催しております。今回が3回目。毎回、開始時間が変わってしまい、申し訳ありません。今回は13時30分からになります。  日時:令和6年9月21日(土)13時30分~15時00分  前回は、北風と太陽というテーマでお話をしました。参加された方々は17名。子どもと話ができない期間が続いていくとこのままで良いのか。そんな気持ちが親御さんの中

          芦沢さんとぼく 第14話 迫られる決断

           優さんが話した。私は目の前で起こった光景に私はただただ驚いていた。私が面談した時、優さんは何も話さなかった。私の前では心配で一杯だった母親は、少しホッとしたような表情を浮かべて、帰っていった。何が起こったのだろう?芦沢さんは何をしたのだろう?    優さんとお母さんの姿が見えなくなり、面談室に私と芦沢さんの二人になった。  「田中さん、お疲れ様でした」  「お疲れ様でした。芦沢さん、芦沢さんは何をしたんですか?」  「何って何ですか?」  「私が前回、お話をした時に

          芦沢さんとぼく 第14話 迫られる決断

          芦沢さんとぼく 第13話 転機

           寄り添うこと。それを考えていたら、分からなくなった。私は大学で福祉を学んだ。専門職は相手の課題を見つけ、評価し、それに対する手助けをする。それが仕事だと教わった。でも、もう一方で、相手に寄り添うようにとも言われた。相手の話を傾聴すること。大事なことだと思った。でも、傾聴すれば寄り添うことになること。そもそも寄り添うって何を言うのか?大学では教えてくれなかった。  仕事につき、芦沢さんの面談に同席した。仕事をしているようには見えなかった。大学で教わったものではないと思った。

          芦沢さんとぼく 第12話 寄り添うこと

           泣いた。大人になって初めて泣いたのかもしれない。自宅に帰ってからも、ずっと今日の出来事を振り返っていた。私は相談に来た優さんを見た時に、昔の自分を重ねていた。学校に行きたくなかった自分。輪の中に入れず。両親から何で行かないのか?と何度も聞かれ、自分でも何でなのか分からないから、黙っていると、怒られ・・。そんな過去の記憶が蘇り、話を聞くのが嫌だなと正直、思った。    お母さんに部屋から出てもらい、優さん一人になった時、話を聞くのが嫌だと思ったのに、私だったら、話が聞ける、私

          芦沢さんとぼく 第12話 寄り添うこと