#36 『プリズム』
季節の流れ、移ろいと共に
一年という時間の中で
生まれた4人の恋愛が描かれる。
恋愛の始まりと終わり。
どちらかと言えば
恋の終わりに照明が当たり、
心の移り変わりを見ていく。
あともう少しで
上手くいきそうだったのに。
やっと、あの時掴めなかった手を掴んで
もう離さないと決めたのに。
逃げていたことから正面から向き合い、
ずるずる続けていた関係性をやっと断ち切ったというのに。
苦しい思いを閉じ込め固く鍵をかけていた心をひらき、暗い闇から光を感じられるようになったというのに...。
予期せぬ障害に振り出しどころか、
距離感に溝が生まれてしまい挫かれることも、
ようやく再び出会えた愛に運命を感じながら、
徐々に自分という存在を修復し未来への希望まで抱いていたのに、思いが通り抜けてしまったり。。
さまざまな恋の結末に、
揺れ動く感情が透き通って伝わってきては
胸が締め付けられた。
光を失う怖さを知っていると
また素直になること、心をひらくこと、
自分を見せることが怖くなる。
それでも新しい予感を感じさせる彼らの成長した姿には、新しい恋に踏み出す力をもらえるだろう。
ジェインがどうしてパンを好きでもないのに
パン屋をやっているのかの理由に気づいた時。
愛おしさに溢れ、この時の翻訳の言葉のセンスにもわたしの大好きなエッセンスが詰まっていた。
訳者あとがきにて知ったこと。
著者は映画演出も手掛けているようだ。
矢島さんも述べていたように著者がメガホンを取り映し出す『プリズム』の世界を観れる日が来ることを楽しみに、希望を膨らましていきたい。
それまで、
いくつもの煌めく季節を、人との出会いや別れ、つながりを大切に過ごしていこう。
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