子どもが前のめりになる!社会の授業のつくり方②
社会が苦手な、すべての若手教員に送ります!「子どもが前のめりになる!社会の授業のつくり方」です。
前回の投稿では、「社会の授業がめざすもの」を説明しました。もしまだ読んでいなくて興味のある方は、こちらも読んでもらえると嬉しいです。
1.社会の授業がめざすもの
ぼくは、「社会を豊かな視点でとらえ、ともに幸せを追究していく子を育てる」ことを目指す教科だと考えています。
そのためには、一人ひとりが当事者意識をもって問いを立てる必要があります。多様な考えを認め合いながら、ともによりよい解決を考える必要があります。
ということで、ここからようやく授業づくりに移っていきます。マインドセット完了ということです。
2.学習指導要領が教えてくれる
授業をつくろうと思っても、若手教員にとっては「何から始めればいいかわからない」が本音ですよね。
教材研究しなさいってよく言われるけど、具体的な手順はあまり教えてもらう機会ないですからね…
ということで、ぼくが社会の授業をつくるときにやっている具体的な手順をご紹介します。他の教科も同じようにやっているので参考になるかと思います。それではいきましょう!
(1)到達地点「資質・能力」を確認する
まずもって、やらなければいけないことがあります。
それは学習指導要領を開き、育てる「資質・能力」を確認することです。
もちろんすべての教科・単元でやっていると寝る時間がなくなります。だから、自分の力を入れたい教科・単元。もしくは苦手で何をやればいいかわからない教科・単元にしぼってやります。
余談ですが、指導要領は文科省がUPしているものをPDF化し、パソコン・タブレット・スマホなりに入れておくことをおすすめします。
1つの教科でも分厚い上、肝心なときに手元にない!ってよく起こりませんか。指導要領を常に持ち歩くのは至難の技です(笑)
PDF化しておくと、全教科分をどこにでも持ち運べますし、いつでも見られて便利です。
さて、話を戻します。まず指導要領を開きましょう。学年ごとに目標と内容がズラッと並んでいますので、該当の内容ページへ。
書き方はどの学年も共通しています。ここでは、5年生の最初の単元を例に見ていきます。(厳密にいえば小単元なのですが、今回は単元と明記します)
最初の「○○について〜」が今回の学習する大まかな内容です。この例だと、我が国の国土の様子と国民生活について学習するとわかります。
次の「学習の問題を追究・解決する活動を通して、次の事項を身に付けることができるよう指導する」の部分は、全学年共通です。
つまり、社会科では問題解決的に学習を進めて、求められる「資質・能力」を身に付けていくということです。
アが「知識・技能」、イが「思考力・判断力・表現力」です。(ア)(イ)はそれをさらにこまかく分けたものだと理解しておけば大丈夫です。すべての単元がこの構成で書かれているので読みやすいです。
続きには、それをさらに詳しくしたものが書かれています。そこを読めば単元の見通しがもてるようになってきます。今回の例だと…
【太字の部分に注目してみてください!】
おわかりいただけたでしょうか。「思考力・判断力・表現力」で書かれていたことを考え、表現することを通して、最終的に「知識・技能」で書かれていたことを理解することができればOKです。
これが授業づくりの最初にやるべき、育てる「資質・能力」を確認することです。到達地点が見えると、教材研究のしやすさが格段に上がります。
ベテランの先生がよく「最初に教科書を見て自分が感じたことを大切にしなさい」と教えてくれます。たしかにそれも大切なことだと思います。しかし、若手教員にとっては到達地点すら定かではないのです。
ゴール地点を知らないマラソン大会に参加させられて、自分の思うように走ってみなさいと言われても、これこそ無理ゲーです。
教科書から始めるのは、経験をある程度積んで、到達地点がわかるようになってきたらでいいと、ぼくは思っています。
(2)「育てたい子ども像」を明確にする
到達地点がわかりました。
その次にやることは、到達地点と子どもの実態をすり合わせて、育てたい子ども像を明確にします。
要は、理想と現実のギャップを明らかにするのです。
ここが意外と抜けがちです。子どもの実態が違えば、もちろんアプローチの仕方が変わります。日頃の子どもたちの学習状況や学びに対する姿勢などをもとに、育てたい子ども像を考えます。
なんとなく考えるのではなく、必ず言語化します。専用のノートでもスマホやタブレットのメモ帳でも何でもかまいません。言葉にして残します。
そのとき、できる限り具体的に書くといいです。「教室の子どもの姿」がイメージできるくらい具体的に言語化できると指導しやすいです。
ぼくは、「国土の位置・構成・領土範囲を、大陸・海洋・島の位置関係を使って、自分なりの言葉で説明できる」としていました。
「教室の子どもの姿」がイメージできるくらい具体的にするというのは、土居正博先生の著書から影響を受けています。最後にリンクを貼っているので、力をつけたい若手教員の方はぜひ買って読んでみてください。
(3)「教科書」を「教材化」する
さて、ここまできたら後は「教科書」を「教材化」するのみです。
ここがいちばん楽しいなのですが、社会が苦手な方にとってはいちばん苦しいところですよね(笑)
教科書を開いて、単元全体をザッと読んでみてください。さっき確認した指導要領の内容がわかるように構成されています。小学校の社会の教科書はわかりやすい反面、めっちゃ浅く広く書かれています。
子どもたちにとってはやさしいのですが、先生にとっては情報不足感が否めません。そのため、自らの手で情報を補っていく必要があります。
おすすめなのは、教育書コーナーに行き、これから教材化する単元がのっている本を探しましょう。ここで注意したいのは、とりあえず全単元がのっている本を買うのはNGです。
もちろん全単元がのっている本はそれなりのメリットがあるのですが、「とりあえず全単元!」という考え方はおすすめしません。単元が厳選されていて1つの単元について数ページにわたって買いてある本がいいと思います。
そのほうが単純に詳しくわかります。そしてぼくのイメージでは、そっちのほうが著書の熱意や考え方が色濃く表れています。
とにかく若手のうちは、教育書に書かれている考え方や授業プロセスをマネすることです。学習指導要領を読んで、子どもの実態から育てたい子ども像を明確にしていれば、自分なりのアレンジが加わった実践になっていきます。
あと、情報不足だから勉強も兼ねて、地理や歴史の分厚い本を買うのもあまりおすすめしません。それができるなら、最初から社会が苦手な…なんて思い悩むことはないと思います。どっぷりハマった人が手を出す部類だとぼくは思っています。
社会科について書かれた教育書がいちばん読みやすく、授業づくりにも直結していいです。おすすめの先生は、前回ご紹介した澤井先生、由井薗先生、宗實先生です。
ただ、ご自身で教育書コーナーに行かれて、いいなと思った本を買うのがいいと思います。本は出会いが大切ですからね。
(4)まとめ
ということで、今日は「学習指導要領が教えてくれる」というテーマで書いてきました。簡単におさらいしましょう。
まずは、学習指導要領を開いて、育てる「資質・能力」を確認する。
次に、子どもの実態とすり合わせて、「育てたい子ども像」を明確にする。
最後に、教育書を片手に「教科書」を「教材化」していく。
こんな感じです。ぼくが新採3年間いろいろやってみて、これがいちばんしっくりくるなと思った方法です。若手は若手なりの教材研究の方法があると思います。みなさんもぜひ、これを参考にして自分なりの教材研究の方法を見つけてみてください。
いよいよ教科書を教材化していく段階まできました。社会の授業がつくりたくなってきた!という方が1人でもいれば嬉しいです。この続きはまた次回書きたいと思います。
3.子どもが前のめりになる問い
4.教えない、全員で調べる
5.解決するのは子ども
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。おすすめの本のリンクはこちらに貼っておきます。
「育てたい子ども像」をはじめ、若手教員なら知っておきたい情報が満載です。力をつけたい!と思う方は読んでみてください。
こちらの筑波シリーズは全学年おすすめです。著者の熱意や考え方が色濃く表れている良書です。