千夜千首#7/呼吸する色の不思議をみていたら「火よ」と貴方は教えてくれる
こんばんは。今日もお疲れさまでした! 毎夜19時に、あなたの心に響きそうな一首を選びじっくり解説していく「千夜千首」。第7夜は、穂村弘さんの作品を味わっていきます。
今回はあなたを不思議な世界へ連れて行ってくれる短歌で、一日を締めくくっていきますね。
お届けするのは、毎日短歌を読み、『心のお守り』になるような言葉を探してはnoteで紹介しているつくだです。書籍の編集や文を書いています。
では穂村弘さんの作品を自選ベスト版歌集『ラインマーカーズ』からご紹介していきましょう。
呼吸する色の不思議をみていたら
「火よ」と貴方は教えてくれる
この歌は、男性中心の社会になるよりもずっと昔、すべての始まりである女性的な慈愛と柔らかさから生まれる生命と自然の神秘を歌ったように感じました。
具体的に説明すると、主体の目の前でまるで呼吸をするかのように色が揺らめき変わっていく。名も知らぬその現象に主体は心を奪われます。そこに、「火よ」と「貴方」が教えてくれる。
すると「火」ははじめて存在をえたかのように揺らめき、主体もまた「固有の色」が「火」であることを知ります。つまりわれわれは、女性から生まれ、そして名づけられてはじめて真の生を受けるということです。
ゆえに「呼吸する色」は火の比喩と考えられますが、穂村さんはこの言葉に深い意味を込めています。少し長いですが、穂村さんが自らの歌について語った『世界中が夕焼け』から引用します。
つまり「呼吸する色」というのは、まだ名をつけられる前の「火」なのですね。「世界に名をつける者」である「貴方」は、「呼吸する色」に感銘を受けている主体に対して、「火よ」と教えてくれる。もしかすると、「火」は呼びかけられた瞬間に「火」として生まれたのかもしれません。
技法についても、語っておきましょう。
この歌は、先に述べたような深遠な思想をうちに秘めながらも非常に平易な口語調で詠まれています。その結果、読者は歌の世界に入り込みやすくその世界を堪能することができます。
そして、「呼吸する色」という比喩は、読者の五感をゆさぶり穂村さんの作り出した世界の臨場感を高めています。
今日もまた、実に味わい深く素晴らしい歌に出会いました。感謝!
穂村弘さんのプロフィール
穂村弘さんは、1962年、札幌生まれの歌人です。1990年、歌集『シンジケート』でデビュー。そして、その後、評論、エッセイ、絵本、翻訳などさまざまな分野で活躍されています。『手紙屋まみ、夏の引っ越し(ウサギ連れ)』『世界音痴』ほか、著書多数。『短歌の友人』で伊藤整文学賞、『鳥肌が』で講談社エッセイ賞、『水中翼船炎上中』で、若山牧水賞を受賞する。
穂村さんの他の作品も読んでみたい方は、ぜひこちらをご覧ください。
穂村さんの作品の魅力に迫るにはこちらの本もおすすめです。
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かの大編集者・松岡正剛さんの人気連載「千夜千冊」のごとく、毎夜にわたり、おすすめの現代短歌を一首ご紹介していく連載企画「千夜千首」、お楽しみいただけたでしょうか?
それぞれの歌についてわたしなりに解説していますが、その解釈にかかわらずご自由に解釈して楽しんでいただけたら幸いです。もしよければ、その感想をコメントにお寄せいただけたらとても嬉しいです。
明日も穗村弘さんの、心に響く1首をお届けしていきます。
どうぞお楽しみに!
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