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何度でも言う。うつは甘えじゃない。/うつ抜けできるかな日記#3

はじめての診察を終え、私はそのメンタルクリニックに2週間に1回通うことになりました。抗うつ薬を処方してもらい本格的に治療が始まったのです。

抗うつ薬を飲んではいましたが、効果が現れるのは2週間後。薬が効果を現してくれるのを、ただ祈るばかりでした。病状は変わらず、ほぼ寝たきりで、希死念慮理由のわからない焦り、そしてイライラが募り、激しい頭痛にも苦しめられていました。


「自分は甘えているだけなんじゃないか」という不安

その間にもペースをゆるやかにしつつ、編集の仕事を続けていました。数ヵ月に1回、出張校正で出版社さんに出向いては、校了(最終チェック)をして、終わったら次の企画の打合せをついでにすませてしまう。そんな毎日でした。

この頃、希死念慮と並んで私の心を占める思いがありました。それは「自分は甘えているんじゃないか」という思いです。

世の中には、私なんかよりもずっと苦しい状況の中で頑張っている方がいます。なのに私といえば、1日のほとんどを布団にもぐりこんで過ごし、部屋の掃除や身の回りのこともろくにできずにいました。

その頃の私にできたのは、かろうじて仕事を1日に2~3時間、そしてうつに関する本を読むことぐらいでした。身の回りのことはほとんどできず、無精ひげが生えて、部屋は散らかり放題でした。

心にしみた主治医の言葉

そして2週間後、2回目の診察の日、私は主治医の先生に相談しました。

「仕事にしろ、プライベートにしろ、いままでできていたことが、ほとんどできなくなってしまいました。頑張ろうとすると、頭を締め付けるような頭痛に襲われて、できなくなってしまうんです。これは甘えなんじゃないでしょうか」

先生は、やさしげな笑顔で、「まあまあ、焦らないで。ボチボチやっていきましょうよ」と言うと、こんなふうに答えてくれました。

甘えだとすれば、子供の頃からできていないはずですよ。そうでないのだから、そんな心配はいりません。気にする必要はないです。ひとつ何かができればそれでよし。自分は十分よくがんばった。そんな感じでいいんです」

この言葉に私の心は少しラクになりました。いまは、病気だからできないだけだ。できないことを気にするよりも、いまできることに目を向けよう。そう考えるようになりました。

「甘えているからできない」のではなく、「病気だからできない」だけ

もしあなたが、「うつは甘えだ」という言葉に苦しめられているなら、今すぐその考えを捨てちゃってください。

うつは甘えではなく、れっきとした病気です。甘えているから仕事家事ができないのではなく、病気だからできないだけです。

「うつは甘えだ」「心の弱い人がなる病気だ」と言う人は、自由に働かない頭と身体仕事家事をすることの大変さをわかっていません。

もし手や足を骨折した人がいたとして、その人に「骨折しているからといって甘えるな」「骨折したのは、弱い証拠だ」というでしょうか。うつは「心の骨折」でもあります。骨が固まるまでは安静にしておくことが大事なのです。

つまり「うつは甘えだ」と言う人は、うつという病気について知らないばかりか、人の心を慮る想像力に欠けていると言ってもいいでしょう。そんな人の言葉を本気にしていたら、心が持ちませんよね。

と、ここで聞き流せればラクなんですが、つい「うつは甘えだ」という言葉を引きずって、自分で自分を苦しめてしまいがち。

「甘え」って、そんなに悪いこと?

そんなとき味方になってくれるのが、精神科医の和田秀樹先生の『「うつ」だと感じたら、他人に甘えなさい』という本です。本書の中で和田先生は「甘え方を知らない人がうつになる」とまで断言されています。

この本を読んでから「甘え」って、そんなに悪いことでもないと思うようになりました。結局のところ、人は独りでは生きることができません。だからこそ社会をつくっているわけです。

誰だって、誰かに助けられながら、甘えながら生きています。むしろ、甘えることができないから、心をすり減らしてしまうことだってあるわけです。

うつは甘えではありません。しかし、うつで苦しいときくらいは他人に甘えても、いいじゃありませんか。

もちろん「甘え慣れてしていない人」が甘えるのはかなり難しいタスクかもしれません。何しろ経験がないわけですから。甘えすぎてしまって相手に重荷に思われることがないとは言い切れません。

私もあまり甘え慣れしていなくって、あまり参考にならないかもしれませんが、大切なのは「自分は相手に甘えている」という意識「甘えさせてくれること」への感謝の気持ちだと思います。

結局、相手に甘えるときに問題になるのは、「甘えるのが当たり前」のような意識になって、甘えさせてくれる相手への敬意や感謝を忘れてしまうときだと思うのです。

甘え上手な人は、そこをきちんとわきまえています。そして、1人だけに100%甘えきるのではなく、複数の人に数パーセントずつ甘えて、相手の負担にならないようにしているように感じます。

和田先生は他の著書でも次のように述べています。

精神科医や心理カウンセラーとの心の交流を通じて、「本音を言っても受け入れてもらえるのだ」「つらいときは泣きついていいのだ」という体験をすることで、世の中の他の人に心を開くことができるようになり、もちろん相手を選んでのことですが、素直に甘えることができるようになれば、その人が生きることがかなり楽になります。(11P)

疎外感の精神病理

うつは甘えではありません。しかし、うつのときは他人に甘えていいのです。人は素直に人に頼ることができると健康な生活を送ることができると言えるでしょう。

うつ抜けのヒント#3

今回のうつ抜けのヒントについてまとめておきます。

  1. うつは甘えではない。心の骨折だ

  2. 「誰でも誰かに甘えて生きている」ことを忘れない

  3. 他人への甘え方を身につけると、生きるのがラクになる

ちなみに、うつ病については、いわばエピソード0としてこんな記事も書いています。

前回は、暴走する「死にたい気持ち」に翻弄されながら、はじめてメンタルクリニックに行った経験を書いています。

はじめましての方も、いつも来てくださる方も、
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

それではまた来週、金曜日にお届けしようと思います。

これからもうつ抜けに役立ちそうな記事を書いていきますので、
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明日が、皆さんにとって穏やかで心安らぐ日になりますように!




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つくだとしお|書籍編集者×作家
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