渡の周りは才ばかり 2話
放課後、特別棟三階の廊下。そこは窓から差し込む光で優しいオレンジ色を帯びていた。
その廊下に斜めの影を作りながら、渡が一人歩いていた。歩く彼は外を眺める。そこにはグラウンドを駆け回るサッカー部の姿があった。ボールを止めては蹴る。そして走り出す。渡はその練習風景に何か言おうとしたのか、彼の唇が微かに動いた。が、結局息すれ漏れなかった。
渡は少し視線を上げて窓に映る自分を見た。進みながらも見つめる彼自身の瞳は、何一つ動いていないように彼を閉じ込めていた。
そうして渡は、一つの