初めてのコンタクト
眼鏡をかけた私は、どうしても自分のことが好きになれない。
だから、十数年共に歩んできた眼鏡という道具に、私は憎悪こそあれど愛などない。
分厚い黒縁―。
レンズ越しの私の目は小さくなる。
それがどうしても嫌で、毎朝ぼやけた視界で鏡に映る自分だけを愛でる。
そこにいる私だけ、私は好きになれるから。
けれど、顔を洗い終わって朝食を食べる頃には、嫌いな自分になっている。
根暗で卑屈で鈍臭い。
友達のいない、お金もない、ただ独りぼっちの私。
この眼鏡さえなければ―。
そう思い何度割ろうとしたことか。
でも結局は手が止まる。
なぜなら、この眼鏡が悪いわけではないことを知っているから。
でも、どうしても当たりたくなる。
だから私は決めた。
明日眼科に行くことにした。
初めてのコンタクト。
少し怖いけど、好きな自分に会いたいから。
私は変われる。
そうして今日も眼鏡をかける。