マガジンのカバー画像

37
運営しているクリエイター

記事一覧

【詩】ひかりに包まれて

【詩】ひかりに包まれて

キリストの降誕を祝う

この時期は

色とりどりの

イルミネーションが

主役となって

街のあちこちで

現実から逃れようとする

人々の

心の隙間を照らし出す

不意に

心の奥に眠っていた

幼い頃の夢や希望が

甦り

驚きと嬉しさと

抑えきれないくすぐったさとが

交叉する

光を浴びて

普段は人目を引かない

木々たちは

注目されることに

戸惑いながらも

僅かな自信を取り

もっとみる
【詩】にせもの

【詩】にせもの

ごまかしの効かない世界で

生きる

周りは騙されたふりを

していることに

気づかない

幸せな人

何を求めているの

曖昧なままの誇り

大事なことには

目をつぶって

いい人を演じきって

くたびれた心さえも

覆い隠せる

したたかさ

いつの間にか

にせものが本物に代わる

代わったことさえ

忘れたかのように

何もなかったように

大したことではないけれど

【詩】始まりは朝

【詩】始まりは朝

白壁と靄の境に

微動だにしない老松と

幾重にも連なる屋根瓦とが

優雅に眠りから覚める

そのときを待っている

明けゆく空は

偶然にも頬を染めながら

山極を照らし始める

白い筋を残した蒼い山と

色を違えない雲さえも

敢えて曖昧なまま

恥ずかしそうに

頬を染めていく

人々の気配を感じながら

雲も靄も山も

光を浴びて

いつの間にか

冷静さを取り戻し

何ごともなかったよう

もっとみる
【詩】過去

【詩】過去

どこかで嗅いだことのある

においであったり

懐かしい筆跡であったり

色褪せた写真にうつる

笑顔であったり

その時代に流行った

メロディであったり

懐かしさは

どこか物悲しい

過去に置いてきた

忘れもののように

もう二度と手にすることは

できない思い出だから

大事なときは

足早に過ぎて

だいぶ霞んでしまったけれど

私の脳裏に浮かぶのは

あの時代に生きていた

紛れも

もっとみる
【詩】始まりと終わり

【詩】始まりと終わり

始まりは

いつ終わりになるのかを

知らない

終わりは

いつ始まったのかを

忘れている

始まりと終わりの

確かな線引きなど

ないのだとわかる

始まるときも

終わるときも

偶然なのか

必然なのか

目の前の

矢印を選んで進んでいる

まっすぐな矢印

曲がりくねった矢印

矢印の先に

自分が求めるものがあるのか

わからない

それでも進む

待ってはくれないから

終わり

もっとみる
【詩】笑ふ

【詩】笑ふ

泣いているんです

本当は

とても

悲しいときに

笑ふ

誰も私の心は

見えないから

気づきもしないから

笑ふ

わざと

嘘つきなんです

本当は

とても

苦しいときに

笑ふ

苦しみなんて

無縁だと

誰もそう思っているから

笑ふ

わざと

【詩】巣立つ

【詩】巣立つ

いつの間にか

大人びた言葉で

私を制す

ひとつひとつ

自分で決めて

進んでいく

まっすぐな瞳は

余計なことを

言わせない覚悟を

秘めている

ずいぶんと離れてしまった

ような寂しさに

胸が苦しくなったとしても

大切なものは

羽根が生えたように

いつか遠くへと飛び立つ

大切なことは

その存在を認めること

その現実を私が受け入れること

【詩】さんぽ

【詩】さんぽ

目の見えない

老いた犬は

ぶつかりながら

前に進む

それでも

尻尾を振ってくれるのは

優しい心を持っているから

ヨロヨロ歩く

老いた犬は

用心しながら

前に進む

私に足並み揃えてくれるのは

優しい心を持っているから

【詩】変身

【詩】変身

髪を切ったら

私じゃない私に
なれる気がして

出来上がるまで
目を閉じていよう

そろそろかな

弾む心は
それを待てない

薄目を開けてみようか

いやいや
もう少しがまんがまん

「どうでしょうか」

出来上がりの合図で
目を開けた

さっきまでの
ぼんやりとした私

なんだかとても
頭が良さそう

なんだかとても
お上品

鏡の中の私も嬉しそう

外の空気も美味しそう

胸を張って
上を

もっとみる
【詩】黄昏色

【詩】黄昏色

バスから臨む景色は

黄昏色で

埋め尽くされている

忙しそうに歩く人も

列をなす車も

すれ違いながら

同じ時を生きる

そんな無常に思いを馳せ

横目で見ながら

通り過ぎる

あの人たちは幸せなんだろうか

【詩】あかあおきいろ

【詩】あかあおきいろ

おんぶして

連れて行ってもらった

あかあおきいろまで

おばあちゃんの背中

あったかかったよ

子守唄が

聞こえてきたから

うとうと うとうと

あかあおきいろが

見えなかったよ

帰ってきたけど

また見たくなったよ

あかあおきいろ

おばあちゃん

また連れてって

【詩】無駄なこと

【詩】無駄なこと

それは誰が決めたの

儲けにならないから

気に入らないから

変わり映えしないから

すぐ結論が出ないから

それはあなたが決めたの

人と比べているから

人の視線が気になるから

失敗するのが怖いから

叶うはずないことだから

書いては消し

消しては書いた

この時間さえも

無駄だと言うのなら

何て言い返そうか

目を閉じて

鼻から吸った空気を

口から出す清々しさを

無駄だと言

もっとみる
【詩】境界線

【詩】境界線

つ つ つーっと

引かれた線は

どこまでも続く

消えないんだね

切れ目を探しているんだけれど

どこにも見当たらない

頑固だね

ゆるりと描いた曲線や

まっすぐ引かれた直線は

あなたとわたしを

隔てる線

潜ることも

跨ぐことも

できないように

描かれている

上手だね

あっちとこっちは

色も匂いも全てが違う

こんなことってあるんだね

こんなことってあるんだよ

【詩】端っこを堂々と歩く

【詩】端っこを堂々と歩く

真ん中は歩かない

足を踏み外さない程度のところ

でも道は進む

結構時間はかかるけど

確実に慎重に

端っこから見える景色も

案外悪くないものだよね

真ん中を堂々と

歩いてしまえば楽なんだけど

道を踏み外さない程度に

歩いてみるのも

身の丈に合っているようで

本当に大切なものは

上手に隠れているよね

本当に大切なことは

端っこでも見つかるものだよね