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#201 長崎原爆の日に寄せて【劇評・賛】NODA MAP『正三角関係』と映画『オッペンハイマー』(1/3)

今日もお読みくださってありがとうございます!
今日のタイトル画像は鈴木史朗長崎市長の公式Xからの引用です。

うむー、長崎原爆の日に寄せたかったのに結局こんな時間になってしまった上にやむなく投稿を分けます。ぐぬぬ……。

今日の記事はNODA MAP『正三角関係』のネタバレを含みます。
これからご覧になる方はご注意ください。


長崎の平和祈念式典に寄せて

「一人ひとりは微力であっても、無力ではありません。」

平和をつくる人々よ!

一人ひとりは微力であっても、無力ではありません。

長崎は、平和をつくる力になろうとする地球市民との連帯のもと、他者を尊重し、信頼を育み、話し合いで解決しようとする「平和の文化」を世界中に広めます。そして、長崎を最後の被爆地にするために、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向けてたゆむことなく行動し続けることをここに宣言します。

2024年(令和6年)8月9日 鈴木史朗 長崎市長「平和の言葉」から抜粋

昨日の長崎の平和祈念式典に長崎市がロシア、ベラルーシだけでなく、イスラエルの駐日大使を招待しなかった決断について、鈴木市長を支持したいと感じました。一都市が外国を相手にこうした意思表明を行うことが容易でないことは、想像に難くありません。

アメリカは原爆を落とした当事者なのに、自分は欠席するわ他の主要国まで影響を及ぼすわ、一体全体、アメリカとイスラエル、主要国とイスラエルには、どんなたぐいのどれだけ強固な関係があるのでしょうか。
アメリカは原爆を落とした当事者なのに。

そうした行動を引き出し、何かを浮き彫りにしたことからも、この決断の生み出したものは大きかったと思います。
一都市の市長にその大仕事をさせる国の中枢はどうなってんでしょうか。しかし同時に、こういうことが実現することに地方自治の粋を見た思いがします。地方自治にせよ天皇制にせよ、一つの国を構成するレイヤーは、いくつもある多層構造のほうが雑多で複雑になるがレジリエンスは高いと思う。つくづく、「正解はいつもシンプル」とかいう言説に篭絡されてはならない(マルチ商法にハマったむーちゃんがFBに書いていてそっ閉じした)。
わが師内田樹先生のいう「複雑なものを複雑なまま受け取り、扱う」知性のはたらきを、わたしはあきらめたくない。

日本には、加害に関する語りがない

話がずれますが、このことにも触れておかなければ。

「日本は被害に関する語りはなされているが加害に関する語りがない」という指摘を目にしたことがあります。
ライムスター宇多丸さんもラジオでおっしゃっていた……気がする。
くらたも、そのとおりだと思います。特に最近。
そういう作品を作っているのは、野田秀樹さんくらいしか知りません。野田秀樹さんは主宰するNODA MAP公演で妻夫木聡さん、深津絵里さん、仲村トオルさんらの出演した『エッグ』731部隊について描き出しました。

このことについて書いていたら、それだけであっという間に1,000字超えてしまったので、そちらは切り出してまた終戦の日に公開することにします。
中途半端ですみません。書いたらリンク貼りますね。

NODA MAP『正三角関係』

長崎の平和祈念式典に寄せてこの舞台の感想を書きたいと思ったのは、お見込みのとおり、この舞台の題材が第二次世界大戦と長崎の原爆にあったからです。

NODA MAP主催の野田秀樹さんは1955年長崎県生まれの劇作家・俳優です。
今回のこの新作をもってロンドン公演を予定しているそうです。
インスタグラムでこの舞台の感想を「すごいことには間違いないが既視感があった。才能がある人は大変だ」としている方がいらっしゃいましたが、くらたもまったく同感でした。
確かに、野田さんはこれまでに『パンドラの鐘』『オイル』『MIWA』と、繰り返し繰り返し原爆について書き続けてきました。同じものを題材にして別の作品を作り上げるのは大変です。
しかし、ロンドンに持っていく戯曲だからこそ、また長崎の原爆について言及する。「何度でもナガサキについて語り続ける」野田さんの気骨を感じました。「ナガサキのことはどれだけ語っても語り尽くせない」ということかもしれません。

さて、ここからは観劇レポです。
今日は内容についてではなく、当日券抽選や当選した座席について書きます。

虫の恩返し?当日券抽選に奇跡の当選!

川井俊一さんは家の中に出たハサミムシを殺さずに逃がした理由を、「妻が害がないんだから簡単に殺さないで。逃がしてあげたらそのうちハサミムシの恩返しがあるわよ、と言ったから」と説明していました。
いい人ですね。

くらたも、当日券抽選に挑戦した日に、虫を逃がしました。
その時の話はこちらです。当日券抽選レポもこちら。 ↓↓

そして、果たして当選。
すごい倍率だったと思うのだけれど、超ラッキーでした。
あの虫の恩返しだったのかもしれません。
ありがたや~。

当日券の当選順位29番目の上手袖見切れ席レポ

当日券の当選順位ではかなり後ろの方の29番目で、そのときに残っていた席は見切れのある上手袖席A席と正面から見られる2階立ち見席でした。
2時間立ちっぱなしは疲れるし、見切れたとしても近いほうが好みなのでA席にしましたが、結果これが良かったです。
「舞台上手半分見えません」と言われ、確かに見えない部分はありましたが、半分見えないなんてことはなかったです。

席についたとき「え、結構見えるじゃん!」との喜びに思わず、お隣のお若い女性の方に「結構見えますね」と話しかけたら、「ほんとですね」と答えてくださいました。
また、その方も、「当たらないと思ったから、オペラグラス忘れてきてしまいました」とお話してくださいました。
こういうの楽しいよね!はぴー!

開演してみると、演者が近い~!
松潤(敬称略、以下同じ)との距離30メートル以内に侵入できる日が来ようとは思わなんだ。
また、NODAMAPはほとんど後方の席で観てきたので、舞台が近いと舞台作品を見ているというよりは「人間がやってる感」があるんだなあと新しい発見。

照明のパキパキ音が聞こえた

また、頭上すぐに灯体(照明のライト)がたくさん吊られており、舞台を照射して消えた後にパキパキと音が聞こえました。
舞台照明はとんでもない出力なので、点灯すると灯体は触れないほど熱くなります。場面転換して照明が変わり、明かりが消えると、熱くなった灯体が冷えるときにパキパキと音が鳴るのです。
点灯しているときにも、スーともジーともいう音がかすかに鳴りますがそちらはそこまで気になる音ではありません。
大学の演劇サークルの時は照明や灯体の管理もやっていたのですが、このパキパキ音のことをすっかり忘れていて、「あーそうそう!鳴るんだよね!」と懐かしくなりました。

なお、灯体はめちゃくちゃ重いですが、鉄のバトンにねじでがっちりとめられていて命綱も必ずついていますので直下の席でもご安心を。
大学生の演劇サークルでさえそのあたりは厳重に教えられましたので、プロはもっと安全なはず。

東京芸術劇場の見切れ袖席のA席は、演劇オタクには超オススメです。

「客入れ」に音楽がかけられている芝居を久々に見た

くらたが演劇サークルに所属していた時、開場から開演までの間には音楽をかけていました。この音楽のことを「客入れ曲」「客入れ」などと呼んでいました。この選曲によって開演前に作品の世界に入る前の雰囲気づくりをすることができます。
客入れ最後の曲、つまりの開演のきっかけの曲もあらかじめ決めてあり、「客入れラスト曲」略して「客ラス」と呼んでいました。この客ラスのどこのフレーズで開演体制に入るのかも予め決められています。

なお、そこまでの曲はある程度曲数に幅を持たせてあり、定刻開演にするのか押すのかに合わせて調節できるようになっていました。演者やスタッフ一同はこの「客ラス」がかかると最後の準備態勢に入ります。円陣を組んだりとか。
「客ラス」の決められたフレーズに差し掛かると、客電(客席の照明)が下がり、多くの場合は暗転して舞台照明が点くことで開演します。演劇サークルではほとんどすべての芝居で曲のボリュームを上げて暗転、下げたところで明転し芝居が始まっていました。

しかし、最近見に行く芝居では、この客入れの音楽自体あるものはほとんど見ませんでした。劇団四季などミュージカルはまずこれがない。生オケ付きのミュージカルでは調弦の音が聞こえることがありますが、客入れはない。

最近はそういう潮流なのかしら、と寂しく思っていたところ、本作では客入れに音楽がかけられていました。なんとうれしい!
そういえば野田さんのお芝居は大抵こうした音楽がかかっていたように思います。ストレートプレイの文化なのかしら。

そろそろ開演、というころあいで、あきらかにそれまでとは異なる趣とボリュームの曲がかかりました。
おお、これが客ラスだな。
客ラスがどのように開演につながるのか演出が楽しみ!
……と思っていたら、突然曲がブチっと切れいきなり開演。OH。
この身も蓋もなさがNODAMAPらしいっちゃらしいのかもしれない。

なお、スピーカーが目の前の席であることは購入前にアナウンスがありましたが音量は嫌なほどではなく、その分迫力があったとも言えました(詳細後述)。

うーん、なかなか芝居の内容に入れない(自業自得)。
明日は本作の内容についての感想をネタバレしまくりで書きます!

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