【公演レビュー】2023年1月15日/川瀬賢太郎指揮、東京都交響楽団、中瀬智哉〔ピアノ〕
繊細で芯の強いピアノの騎士
~プログラム~
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番
-休憩-
ドヴォルジャーク:交響曲第9番「新世界より」
日本の男性ピアニストが弾くこの曲は、ノーコンの力任せか、誠実という名の薄味かに終わるケースが大半。
だが、今回の中瀬智哉のソロはキメ細かいタッチを軸にしながら、強靭さのある音楽運びが光った。
ソリストアンコールはラフマニノフ:V.R.ポルカだったが、この曲を聴いて記憶に残ったのはホロヴィッツの録音以来。
近い時期に100%世界を驚かす素材と断言できる。既にピリスのマスタークラスを受講するなど音楽家としての翼を着々と拡げてきたし。
一方、ドヴォルジャークは第2楽章の室内楽的箇所に入念なメリハリを施すなど指揮者の意思は明確だったが、時が経つと案外印象は薄い。
これが例えば神奈川フィルだと指揮者の要求をこなすのに精一杯だから、ある意味「熱演」になる(実際は単にオーケストラがヘタなだけ)が、都響はスッとこなすため指揮者の奮戦ぶりがちょっと浮いていた。
その都響は管弦打のいずれも指揮者の求め、楽想の推移に相応しいサウンドを響かせた。とりわけ木管の透明性の背後に陰影の映ろう音色は見事。
適正価格の演奏会。客席の入り、反応も良かった。
※文中敬称略