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小説:風景の記憶

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オフビートな小説です。
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#エモい

第18回 「妄想」という言葉に「きぼう」というルビを振るのはあなたの自由。

 洋介は、夜の七時近くにマリアが住んでいるアパートを訪れた。窓が暗くなっていた。五分ほど…

第16回 正しくないことが正論になることだって、ある。

 洋介は日が暮れてからマンションに戻った。酒の匂いをぷんぷんさせていた。ふらふらしながら…

第14回 坂道の記憶

 さいごの風景は身近な場所にある、と蝶が言った。  ディズニーランドや東京タワーの思い出…

第13回 幸せに……なれますか?

  土曜日の午前中に金子家を訪れた。いつものように執事が出迎えた。母屋の玄関で蝶が待って…

第12回 はじまりの風景

 本屋で立ち読みをして時間を潰し、夜の七時過ぎにマンションにたどり着いた。  キッチンで…

第11回 マリア

 洋介は、まっすぐにマンションに帰らなかった。  あてもなく歩いていた。  やがて、中野駅…

第10回 決心

 アポなしで金子家を訪れた洋介は、執事に、蝶に会いたいと伝えた。  執事は洋介を残して母屋に戻っていった。五分ほど経って、もう一度インターフォンを鳴らそうとした時に、ようやく勝手口の扉が開いた。顔を出したのは制服姿の蝶だった。  蝶は目が充血していて、口紅が少し落ちていた。洋介は突然の来訪を詫びた。蝶は顔にかかった髪を払った。 「勉強していたのよ」  そう言って、蝶は踵を返した。入れとは言われなかったけど、洋介はついていった。小道の途中で蝶が足を止めて振り向いた。 「

第9回 虚ろな真理子

  果穂から預かった風景はさいごの風景ではないから、喜びなんか見出せない。  生きてい…

第8回 沢渡果穂のさいごの風景

 洋介は断るつもりだった。  マリアの時と同じ結果になるという予感があった。でも、武はそ…