茶道雑誌 2月号 『京都発・季節の言葉(五十)春の雪』より
《春の雪忽ち(たちまち)溶けぬ水菜畑 鈴鹿野風呂(のぶろ)》
「二月初めの立春から季語の世界は春になる。実際の二月、ことに京都の二月は、底冷えがして一年でもっとも寒い時期だが、でも、二月の雪は「春の雪(春雪)」になり、寒さも「余寒(よかん)」とか「春寒(はるさむ)」と呼ぶ。野風呂の句は「春の雪」の白と「水菜(京菜)」の緑の対照があざやかだ」
茶道雑誌 河原書店 2023年 二月号 『京都発・季節の言葉(四十九)春の雪 坪内稔典』より
ずっと前に、梅の枝が描かれたお軸を拝見した時になんとなく『梅の枝ってゴツゴツしてるんだなぁ』と思ったのを覚えている。どういうわけか、その印象だけが残っていた。
そして、それから年月を経て近年梅の時期に梅の枝を見ると確かにゴツゴツしているなぁ、と枝ぶりに目が行くようになった。梅の見方が変わったのはいつからだったんだろうかと、このところずっと気になっていた。
この茶道雑誌を見ていてふと思い至った。俳句の影響だ。数年前に俳句教室に通っていた時期があった。翻訳をしていて、もっと日本語力を上げたいなぁと思い、短歌と俳句を悩んだ挙句、俳句を選んだ。通いやすい曜日だったのと、季語と字数という制約の中で言葉を探すのは良い訓練になるのではないかと思い、とりあえずやってみようと俳句を習い始めたのだった。
そこは闇雲に作ってこいと言われる教室ではなかった。いくつか名句と言われるものを皆で鑑賞した後、「次回までにいくつか作ってくるように」と先生に言われる。家に居たのではなかなか心の動く瞬間に出逢えないなぁと思い、歳時記で季語をチェックし、せっせと出かけては色んなものをじーっと眺めていたのだ。
数年通ったが、与えられた制約のなかで伝えたいことを思うように紡げない自分の不甲斐なさに気持ちが萎えてしまい、最近はとんと御無沙汰だ。この制約、実は心のスイッチを入れる役割になっていたのかも知れない。また俳句を作るか。あるいは気になっていた短歌も良いかも知れない……そんなことを考えながら、ものの見方を変えるきっかけをくださった俳句の先生に感謝する、そんなひととき。
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