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本の紹介

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#読書感想文

『生殖記』と紫色の願い(後編)

『生殖記』と紫色の願い(後編)

時は一月。一年で最も「夢」や「願い」が溢れる時季だ。

神奈川県の寒川神社のお守りの中に「八方除守」がある。これには二つの種類があって「紫色」と「白色」がある。

このうち、白色は「開運招福、万願成就、心願成就、就職成就」は「拡大、発展、成長」の願いだ。

一方で、紫色の「健康回復、身体安全、病気平癒、怪我平癒、精神の安定
長寿」の願いもある。

こっちもけっこう大事だと思うのだが、時として人はこ

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『生殖記』と紫色の願い(前編)

『生殖記』と紫色の願い(前編)

たぶん僕もまた、「拡大、発展、成長」にうんざりしているのだろう。

朝井リョウ『生殖記』で何度も登場する、今の社会で当然の原理とされている「拡大、発展、成長」。

「拡大、発展、成長」の代名詞とも言えるのが、「大企業」である。

主人公の勤める会社はどうやら「大企業」と言って良さそうなくらいには、事業規模が大きい会社のようだ。

その中で主人公は運良く「拡大、発展、成長」を求めない仕事に就くことに

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『昨夜のカレー、明日のパン』

『昨夜のカレー、明日のパン』

木皿泉の『昨夜(ゆうべ)のカレー、明日のパン』を読んだ。一気に読んだ。

ブックアンカーの利用者さんが希望された本だったが、その日の前に読み切ってしまった。

ブックアンカーで希望される本の多くは、読んだことのないものなので、当日に一緒に読み始めるまで、私も読んだことがないものが多い。

読んだことのないものの方が、余計な先入観がない状態で一緒に読んでいけるので、それはそれでいいと思っている。

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本の紹介 伊勢谷武「アマテラスの暗号」

本の紹介 伊勢谷武「アマテラスの暗号」

伊勢谷武「アマテラスの暗号」(2024)宝島社この小説は、次の一文から始まります。

そう、この小説は単なるフィクションではなく、一面の真実をもとに描かれている物語なのです。

「アマテラス」とは、古事記(こじき)や日本書紀(にほんしょき)に出てくる神話の神の名前です。現在では三重県の伊勢神宮に祀られていることで知られています。

この「アマテラス」を取り巻く伝説や記述をもとに、主人公の父の殺害事

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