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読書人間📚『美しさと哀しみと』川端康成/サイコホラー



『美しさと哀しみと』川端康成

昭和36年6月1日〜38年10月にかけ雑誌「婦人公論」に連載
1973年 初版発行 /中央公論新社
2017年 25刷発行

恋愛小説であり、サイコホラー。"心理学の川端康成"と言ってもいい、この時代、川端康成ならではの作品。
題名からするに叙情的で、ノーベル文学賞の受賞者である川端が、日本の情景美を描いた作品だと一見思われますが、川端は『眠れる美女』でも海外で人気、評価を得ているように、背徳的で異常心理な文学の側面もあります。この作品もそう言った色合いの魅力的な作品です。


16歳の少女、音子。と31歳の男、大木。
それから24年を経て、40歳画家、55歳小説家となり、そこへ画家の弟子けい子。小説家の息子、太一郎。
そして、ただならぬ気持ちで寄り添う小説家の妻。


解説では、山本健吉さんは二人の女の関係を同性愛と仰っていますが、これは同性愛なのでしょうか。愛なのでしょうか。何か違う歪さを感じます。師匠を愛する弟子は、小説家一家に復讐を企むが、度を越している。釈然としません。同性愛ってそんなに異常なものでしょうか。と言うのも、弟子はサイコパスだと思われます。愛ではなく、師匠に寄生した精神異常者、異常心理だと感じるところがわたしにはあります。異常な執着はもはや愛ではなく、エゴ。弟子はサイコパスでエゴイスト。ちなみに大木(小説家)もエゴイストですね。音子も、17歳で早産、自殺未遂、精神病院、そして画家になる。なかなかの強者です。


若さはホラーを招くものかもしれません。
なぜあんなにぼろぼろになるまで落ちていけたのか、振り返っても不思議であり、頭の中から消したい過去。純粋一直という、あんなことは二度とないと思うとあの頃に戻りやり直したいような、したくないような。
あれがわたしの人生の絶頂だったのだろう、けい子(弟子)の闇をも恐れない盲目的な一途さがわたしにも無かったとは言えないと音子は突き放すことができないのでしょう。
わたしも時に、あれはホラー、サイコホラーだったかもしれないと記憶を振り返ることがあります。愛は怖いものです。


解説によると、川端は眠り薬(睡眠薬)を濫用しながら執筆していたとのこと。この作品の異常性は、睡眠薬を服用する事で更に増したのではないかと。川端は若い頃から睡眠障害を持ち、最期は自ら命を経っています。どこか幻想的であるこの作品は、たしかに服用しながら書いたもののようであります。
そうすると、川端の作品は、川端の自我が表されているとよく言いますが、この作品も同様なのでしょう。美しい静かな "湖" は母の羊水、子宮とし、最期に割りを食う大木の息子、太一郎は母胎へ戻るかの様に終わる。それは川端の望みであり、死してまた生き帰る輪廻転生物語りなのでしょうか。


カバー 加山又造
解説  山本健吉


映画化されています。次回、感想を投稿します。


川端康成『眠れる美女』原作
2011年のオーストラリア映画🎞『スリーピング ビューティー/禁断の悦び』Sleeping Beauty は特におきにいり。



記事を書くに当たっての
参考文献:清水純子『映画と文藝』日本の文豪が表象する映像世界 / 彩流

🌝声、発声、機能を考える
ボイス・ボーカルレッスン/東京都 
音楽療法(医療行為は行わない)の観点からオーラルフレイル、口腔機能、老化防止を意識した呼吸法、発声のレッスンも行います。

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