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#書評
マイケル・ルイス「フラッシュ・ボーイズ」
勝率100%のギャンブルで巨万の富を得る男たち。
ウォール街の邪悪で強欲な捕食者たちが世界を食い物にしていることがあらためて確認できる。
金融業界で働く人には戒め・更生の材料として、金融市場を利用する側の人には騙されないための武器として、共に有益だ。
主人公である日系カナダ人・ブラッドは強大な権力を相手に立ち向かう正義感と、優秀な仲間たちを次々に集めていく手腕を持ち合わせている。
高度で複雑な高
エリック・ブリニョルフソン「機械との競争」
人間の感覚は直線的な伸び(2倍、3倍、4倍・・・)にはついていける。
しかし、指数関数的な伸び(2倍、4倍、8倍・・・)にはついていけない。
機械や技術の指数関数的な進歩に対する脅威を指摘している。
昨今、人間がロボットに仕事を奪われるというのは誤解であり、むしろ新しい仕事が生まれるはずという主張が多い。
そして、その主張は概ね支持されている。
それに対して著者は、確実に奪われており、今後もっと
エーリッヒ・フロム「愛するということ」
愛をいくつかに分類している。
母の子に対する愛のように元々備わっている愛とは異なり、異性愛や自己愛は訓練により備わる技術であるという。
そして、心理学の見地から、親との関係が子供の愛の技術にどのような影響を与えるかも考察している。
「一人きりでいられること」は愛することができるようになる必須条件であり、自分の足で立てない人に愛の関係は成立しないともいう。
ペット代わりに赤ちゃんが欲しい女。
母親
九鬼周造「情緒の系図」
喜怒哀楽などの人の感情を体系的に整理している。
随所に実在の短歌を挙げながら、自論の展開を補足する独特の手法。
40種以上ある感情を表す言葉の相関関係を巻末に系図で示している。
ただ、系図は意欲作ではあるものの、この整理に至るまでのそれぞれの言葉の成り立ちの解説や結びつきの解釈が十分には表現されていない。
例えば、「愛しい」は「かなしい」とも読み、その対象がいずれ無くなることを思う「悲」の感情を
シャルル・ヴァグネル「簡素な生き方」
暮らし・仕事・人付き合い等について、虚栄と本質の仕分けをしている。
見せびらかすための家。
着飾ることだけに夢中の女。
金儲けのための仕事。
19世紀末に書かれた本とは思えない。
21世紀の現代を嘆く本と言われてもまったく違和感がない。
この本における「簡素」の意味は深く広い。
人に命令するとき、いざとなったら自分で行う準備ができていることも、「簡素」に含まれる。
人に犠牲を強いるとき、自身も
サミュエル・ハンチントン「文明の衝突」
21世紀の世界の大きな方向性を示す。
文明の類似する国同士がブロックに収斂していくこと、文明の異なるブロック同士で衝突が起こること。
出版の数年後に起きる9・11の背景・要因もよく分かる。
国と文明が一体なのは世界で日本だけと言う。
文明を共有する他国がなく、国内に日本文明以外の主要な文明を持たない。
西欧文明圏の盟主である米国とは決別の運命にある。
儒教文明圏の盟主は中国であり、アジアでの主導
宇沢弘文「自動車の社会的費用」
自動車社会への懐疑。
成長が重視される20世紀の経済において、考慮されにくかったその負の面を堂々と列挙している。
自動車は毎年2万人の人を殺している。
自動車は継続的な環境破壊にも加担している。
さらに、豊かな暮らしをおくれる街作りにも悪影響を与えている。
自動車の在り方が完全に変化する可能性も見えてきた今、自動車というたった100年程の一時的な流行が残した爪痕と考えると、その費用は重い。
経
ダニエル・コーエン「経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える」
人々は事が起こって少し経ってから意味を理解する。
結局、歴史から何かを学ぶということには限界があるという。
それでも、本書を読めば、歴史の大きな流れを踏まえて、現在や将来を考えることができる。
中国とインドの経済参加がグローバル経済を本格化させた。
そして、中国とインドの発展はやがて資源の枯渇を進め、グローバル経済に限界をもたらす。
先進国がしてきたことを後進国が同じようにすることができないとい
Frederic Laloux「Reinventing Organizations: An Illustrated Invitation」
組織運営の進化過程を5つの色で分類して、それぞれの特徴を整理している。
従来の大企業が行ってきた性悪説による管理(Orange型)から脱却し、性善説を前提に管理を放棄する形態(Teal型)を紹介・推奨している。
本家である「Reinventing Organizations」を読まずとも、豊富な挿絵と平易な英語の組み合わせで解説した本書を読めば、理論の概略が掴める。
むしろ、経営者や人事部が社内
水野和夫「株式会社の終焉」
世界は歴史的な転換期にある。
有識者や権力者が信奉する「成長」「グローバル化」「競争」といった観念は既に時代遅れのものである。
薄々感じ始めていたことを定量情報や歴史を用いて論理的に整理している。
マネーゲームとの決別を意図したトヨタの新型株式。
陸の国の時代が来たことを告げる英国のEU離脱。
やり過ぎた部分の調整を象徴するジャンボジェットやコンコルドの引退。
たしかに、全てが歴史の必然であるよ
スディール・ヴェンカテッシュ「社会学者がニューヨークの地下経済に潜入してみた」
実際に入り込んで、内側から観察する。
前作「ヤバい社会学」から続く手法。
コロンビア大学教授になっても、変わらない。
ヤクの売人や売春婦といった人とつながり、裏社会に徐々に深く入り込む。
なぜ、このインド系アメリカ人はこうも裏社会の人々から受け入れられるのか・・・
ニューヨーク=多様性の街というイメージだが、そうも簡単な話ではない。
保有している文化資本により、棲み分けがきっちりある。
尊大な「
ロナルド・ドーア「金融が乗っ取る世界経済」
私欲の追求を止めないアングロサクソン世界への懐疑。
リーマンショック後、無反省に復元される高額報酬。
ウォール街の影響力を排除しきれない歪んだルール形成。
見えないところで進む金融エリートの強欲な言動を知ることができる。
胴元の安全性を担保したうえで参加者から確実に搾取するという点で、金融商品はカジノであることをあらためて認識できる。
巨大金融会社のトレーダーたちは、本来ハイリスクとセットであ
ロナルド・ドーア「日本の転機―米中の狭間でどう生き残るか」
どの国の核に守ってもらうか。
日本のエリートは米国の一択で思考停止しているという。
しかし、中国という選択肢が非現実的ではないことに気づく。
先日、核保有国や日本が欠席する中、核兵器禁止条約の制定を目指す会議に100ヵ国以上が参加したというニュースを見た。
本作の中で引用されるオバマの演説もそうだが、核をめぐる世の論調はどこか空しく、進展を予感させないものが多い。
そんな中、著者はいくつかの提