茶野森かのこ

まだまだ未熟者の素人ですが、オリジナル小説書いています。 エブリスタさんや魔法のiらん…

茶野森かのこ

まだまだ未熟者の素人ですが、オリジナル小説書いています。 エブリスタさんや魔法のiらんどさん等でも同じ作品、その他載せています。少しでも良い時間潰しになったと思って貰えるような、そんな作品が作れたらと思っています!

マガジン

  • 長編小説完結『メゾン・ド・モナコ』

    メゾン・ド・モナコのアパートの住人は、火の鳥の青年フウカ、水の妖の美女マリン、狼男のギンジ、男性アイドル猫又のナツメ、化け狸の少年ハク、貧乏神の春風。 そこへ、夢や仕事を失った人間の女性、なずながやって来る。 曾祖母が渡せなかった手紙、その宛先を探していたなずなは、手紙の事を知る春風に手招かれ、火の玉騒動の犯人と疑われるアパートの住人達の疑いを晴らそうと、彼らと共に奔走する。 ちょっとずつ過去から前を向いていく、なずなと妖達のお話です。 #あやかし#恋愛要素#長編小説#オリジナル小説#日常小説#現代ファンタジー小説

  • らくがきたち

    描いたらくがきをまとめました。

  • 短編完結『踊り子と軍人 結託の夜』

    「この薬を飲めば、人生をやり直す事が出来ます」 とある国のとある街。ある夜に、踊り子をしている彼女の元へ、軍人の青年が訪ねてくる。 彼女には、秘密があり、自分を生きる事をやめた過去があった。 そんな彼女に軍人が提案したのは、人生をやり直す薬と、結婚だった。 彼女がもう一度、今の自分のまま生きる決心をする、その場面のお話です。 #オリジナル小説 #ファンタジー小説 #恋愛要素 #ヒューマンドラマ #短編小説

最近の記事

メゾン・ド・モナコ 75

「わ、私も雇って貰えるんですよね!」 「サキさんにも言ったろ?君の力が必要だ。それに、君がやってくれたら、ヤヱさんも喜ぶんじゃないかな」 「…ヤヱばあちゃんも…」 手紙を通して、この店を通して、またヤヱと会える気がして。それは何だかとても素敵な事に思えた。 以前はレストランだった、このメゾン・ド・モナコが復活する。 新しい目標がなずなの前に現れ、胸が高鳴っていく。母なんかに話したら、きっと驚くに違いない。定食屋もまともに手伝えなかった娘が、よそのレストランで働くのだ、驚くよ

    • メゾン・ド・モナコ 74

      サキの病室を後にしてから、なずなはどういう事だと春風を問い詰めたが、春風はどこかもったいぶった様子で詳細を教えてくれなかった。 「うちに帰ったら、ちゃんと話すよ。何せ、これには皆の協力が必要だからね」 楽しそうな春風の様子に、勝手に決めてだ何だと言おうとしていた文句が、するりと手から零れ落ちていくようだった。 普段、面倒くさがりな春風が、ここまで前向きに楽しんでいるのだ、見ているなずなまで何だかワクワクしていた。 アパートに戻ると、春風は早速皆をリビングに集めた。イベン

      • メゾン・ド・モナコ 73

        *** 町内会のイベントは大成功の内に幕を閉じ、それから数日後、なずなは自身で借りていたアパートを引き払い、正式に、メゾン・ド・モナコの住人となった。仕事内容も変わらず、いつも通りの日々を過ごしている。 ただ、少しだけ変化があったのは、フウカとの関係だろうか。二人並んでキッチンに立つのもそわそわと落ち着かず、たまに腕同士が当たれば、二人して赤くなって慌てている。 明らかに、フウカの気持ちも以前と比べて変化しているようだが、それに気づかないのはなずなだけだ。 マリンと春風は

        • メゾン・ド・モナコ 72

            ** ふ、と夏の風が心地よく頬を撫で、春風は現在のメゾン・ド・モナコを見上げた。 笑顔の咲くメゾンドモナコ。形は違うし、君はいないけど、憩いの場を作るという君の夢を叶えられたかな。 春風の手には、なずなから受け取った手紙がある。 “春風、あなたに会えて良かった。約束を守れなくてごめんなさい、病気って嫌ね。あなたは、幸せでいるでしょうか。どうか、悲しい思いはしていませんように、苦しい思いをしていませんように。私は幸せでした、あなたと過ごした日々は宝物のようだった。 あ

        メゾン・ド・モナコ 75

        マガジン

        • 長編小説完結『メゾン・ド・モナコ』
          75本
        • らくがきたち
          2本
        • 短編完結『踊り子と軍人 結託の夜』
          9本

        記事

          メゾン・ド・モナコ 71

          なずなは自分に頷いて、そっと深呼吸をした。 「良かった…これで心残りはありません」 そう心を決め、明るい表情を繕って顔を上げた。その言葉に、フウカは首を傾げた。なずなはフウカの顔を見れなかった。 「…どういう事です?」 「私は、火の玉の犯人が捕まって、皆さんが人と交流を持てるようになるのが条件でここにいましたから、もう出て行かないと」 「なずなさんは、ここに居るのが嫌なんですか?」 「そういう訳じゃないですけど…」 「…なら、居ても良いじゃないですか」 掠れる声に、な

          メゾン・ド・モナコ 71

          メゾン・ド・モナコ 70

          ライブが終わると、三人は温かな拍手に胸を熱くしたまま、感謝の思いを込めて頭を下げた。 アパート内に戻り、人が入らない二階に向かうと、三人は顔を見合わせ、それから泣きながら互いに抱きしめあった。 「なず、明里…!」 「泣かないでよ、瑠衣、ありがとう」 「こっちこそありがとう!」 「最後に、瑠衣の歌が聞けて良かった」 「…私だって、なずの曲、三人で出来て良かった」 泣きながら抱き合えば、「お前ら!」と怒声が聞こえてきた。驚いて顔を上げると、そこにはフウカと、人の姿に戻ったナツ

          メゾン・ド・モナコ 70

          メゾン・ド・モナコ 69

          *** ライブの時間は二十分程、曲は三曲。 アパート内の二階への階段で、ふぅ、となずなは深呼吸する。なずなは衣装を着るでもなくラフな姿だ。マイクはラジカセに繋いだ、ギター一本のアコースティックライブ。久しぶりに人前に出るので、ここ一週間、ナツメのスパルタレッスンによって感覚を取り戻し始めていたが、緊張やら不安やらで落ち着かない。 せめて、ナツメがいてくれたのが幸いだが、その頼りのナツメが、なかなか姿を現してくれないので、なずなの不安は募る一方だ。 「…ナツメ君まだかな」

          メゾン・ド・モナコ 69

          メゾン・ド・モナコ 68

          「ここは昔、レストランだったって言ったろ?僕は昔、君のひいおばあさん…ヤヱさんがまだ若かった頃、彼女と彼女のご家族に、ここで世話になってたんだよ」「え?」 なずなは、きょとんと春風を見上げた。春風は神様だから、ヤヱの居た時代を生きていても不思議はないが、だとしても、春風がヤヱと共に居た事、ここがヤヱのいたレストランだという事、でも、手紙の住所は違う。 「ど、どういう事ですか?」 驚きながらすっかり混乱しているなずなに、春風は眉を下げて笑い、それから再び、賑やかな庭に目を

          メゾン・ド・モナコ 68

          メゾン・ド・モナコ 67

          なずなもレストランを手伝いつつ庭の様子を眺めていると、ある人の姿に目を止めた。 「明里!来てくれてありがとう」 そう駆け寄り声を掛けたのは、なずなと共に夢を追いかけたバンドメンバーの一人、明里だ。 なずなは、瑠衣と連絡を取った翌日、明里にも連絡を入れていた。彼女は旅館を継ぐと実家に戻っていたし、夏の旅館はきっと忙しいだろう。迷惑かもしれないと思っていたが、彼女は瑠衣との事も受け入れ、こうして駆けつけてくれた。 明里はなずなに気づくと、ほっとするような笑顔を向けてくれた。

          メゾン・ド・モナコ 67

          メゾン・ド・モナコ 66

          *** そうして時は過ぎ、今日はいよいよイベントの日だ。 キレイに整えられた庭には、チラシを見て覗いてくれたのだろう、ご近所と思われる人々や、紫乃やギンジの勤める花屋の店主達が声を掛けてくれたお客さん達が、ちらほらと顔を見せてくれていた。 倉庫で眠っていた本の数々は、以前ナオがシャーロックホームズの初版本だと目を輝かせていたように、貴重な物も眠っていたらしく、適当にチョイスしてチラシに載せた羅列を見てやって来る人もいた。何故そんな貴重な物があったのだろうと、なずなは首を

          メゾン・ド・モナコ 66

          メゾン・ド・モナコ 65

          「も、もしもし、久しぶり。ごめんね急に…今、大丈夫?」 『うん、大丈夫だけど…』 久しぶりの会話に、どんな風に話し掛けて良いのか分からず、戸惑ってしまう。えっと、と言葉に詰まるなずなに、フウカは握る手に少しだけ力を込めた。なずなが顔を上げると、フウカが穏やかな表情で頷くので、それにまた勇気を貰い、なずなも頷いた。 「えっと…今度イベントやる事になってね」 『…イベント?』 「うん、で、私も何かやらないとって思って…バンドで歌ってた曲、他の人とやってもいいかなって」 『…あ

          メゾン・ド・モナコ 65

          メゾン・ド・モナコ 64

          その夜、もやもやが止まらず、少し冷静になろうと、なずなは庭に出て、イベントの為に出していたベンチに腰かけた。これからは常設となりそうだ。 ぼんやりと、空に浮かぶ大きな月を見上げる。夜風が頬を撫で、少しだけ気持ちが落ち着いてきた。 ふぅと息を吐き、手にしたスマホに視線を落とす。メッセージアプリを開いたり、思い直して電話帳を開いたりを繰り返し、結局画面を閉じてしまう。 なずなは、バンドのメンバーだったボーカルの瑠衣に、連絡を入れるべきか悩んでいた。 彼女に必要とされなくても、

          メゾン・ド・モナコ 64

          メゾン・ド・モナコ 63

          ふぅ、と溜め息を吐いて、なずなはアパート内の階段に腰掛けた。 目玉というか、イベントで一番人が呼べるのは紫乃だろう。キッチンカーでも宣伝してくれているので、その流れで、少しでもメゾン・ド・モナコへ目を向けてくれれば良いが。 そんな風に、どうしたらお化け屋敷と呼ばれるこのアパートに人を呼べるか考えていると、ふと、友人達の顔が浮かんだ。 連絡、してみようかな。 そう思ってスマホを手に取るも、何となく気後れしてしまう。 夢への道を絶たれた時、良くない事ばかり考えていた。皆に

          メゾン・ド・モナコ 63

          メゾン・ド・モナコ 62

          *** それからなずなは、気持ちを切り替えて、レストランとイベントの準備に集中して取り組んだ。 どうにか手分けをして庭を更に整え、倉庫内に眠る品物のピックアップや、外でも寛げるようにと、ラグや椅子、テーブルも用意した。それらの物は、倉庫の角に眠っていた物だったり、紫乃や花屋の店主達が貸してくれた物だ。 倉庫に眠っていたテーブルは、シックなアンティークの物で、表面には細かな傷がついていたが、これが実際レストランで使われていたと思えば感慨深かった。そういえば、曾祖母のヤヱも

          メゾン・ド・モナコ 62

          メゾン・ド・モナコ 61

          *** 「…僕に、シュガを責める資格はないんです」 フウカの言葉を鼻で笑うシュガに、ギンジはシュガの腕を強く捻り上げた。 「っ、俺は何もしていない!」 「お前は少しは反省しろ!お前のやった事が許されるわけじゃねぇんだぞ!」 「そもそも、なんでこんな事したんだ?お前は、念願の彼女を手に入れたんだろ?」 ナツメは忌々しげにシュガに問う、シュガはふいっと視線を逸らした。 「いつも彼女は泣いてるのに、誰のせいとも言わないからだ。テラに酷い傷を負わせたっていうのに、こいつは人

          メゾン・ド・モナコ 61

          メゾン・ド・モナコ 60

          だが、そんな二人を、碧の国の妖達はよく思わなかった。元々が、よその国の妖との交流に積極的ではない国だ、国を出る者もほとんどいない。それにテラは、碧の国の中でも由緒ある家のお嬢様だった。 テラは、碧の国の英雄の血を引いていた。人魚と半魚人の争いを治め、現在の碧の国を創ったともされる妖だ。その為、テラの家では、必ず自分が人魚なら伴侶に半魚人の妖を選ぶというしきたりがあり、テラはよくお見合いをさせられていた。 なので、テラがフウカと心を通わせているなんて、親族にとっては言語道断だ

          メゾン・ド・モナコ 60