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ビーフン東の中華ちまきに白旗をあげた日

ー すべては新橋で完璧なちまきに出会ってしまったせいだ ー


新橋駅直結のビルの二階

階段を上ったらすぐに現れるのは「ビーフン東」


おめあては「バーツァン」こと中華ちまきだった。


では突然ですがこのちまきの中身を明らかにしちゃいます。

(せっかちなので。)


じゃん


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キラキラ、ごろごろ。


付き添ってくれたのは私と同じくもちもち好きな友だち。


私たちは席に着くと、メニューに目もくれず、中華ちまき2つと小さいサイズのビーフンを2つ注文した。


そして登場したのがこちら。

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大きい。

つやつや。

そして丁寧に折りたたまれた笹?の葉っぱと、その上にふわっと腰をおろしている感じのちまき。


一口目。

食べてすぐわかる「なんかおいしい」感。

言うまでもなくもっちもちだし、

味つけもシンプルと言うと聞こえが悪いかもしれないけど、いたってシンプル。

それがストレートに私のハートを射抜くからたまらない。

そもそもちまきに複雑な味のハーモニーなんて求めていない。


そして二口目。

私はついに見つけてしまった、、。

光り輝くダイヤモンドを、、。



そう。

その正体は他でもない、豚の角煮だった。


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どでーん


ここの中華ちまきの具材は、豚の角煮とうずらの卵、それにしいたけやピーナッツなんかも入っている。


私はお宝が眠る山を少しずつ少しずつ掘削していく。


うずらの卵やしいたけやピーナッツといったお宝が見つかったときももちろん嬉しい。


しかし大粒の豚の角煮のきらめきたるや!


少しでも角煮の端が見えたら見逃さない。

そこを一点集中で掘り続けて、ついにダイヤを丁寧に掘り出す。


ごろっごろ


1つ出てきて満足していてはいけない。


さらに掘り進めるうちに次から次へと姿をあらわす私のダイヤモンド。


ごろっちゃら

ごろっちゃら


ダイヤを1つかじってみる。

(ひとかたまりを一口で一気になんて、とてもじゃないけどもったいなくて食べられない。)


じゅわ〜〜〜


柔らかくてジューシー。

それに中まで味がしみている。

きわめつけは豚の脂身の甘み。

甘い、、。

この甘さは豚肉にしかなせないワザだよな。


ご飯がすすむ。


冷めていくにつれてもちもち具合が増していくのも楽しい。

(β化?)


次第にお米が主役なんだか、豚の角煮が主役なんだか、わからなくなってくる。


最後まで豚の角煮を残しておいた。

最後の一口は豚の角煮とお米を同時に食べてフィニッシュ。


食べ終わって感動も冷めやらぬうちに、

「これから中華ちまきのお店を巡っていきたい」と言った友だち。

私も

「それやりたい!」と即答した。


しかし家に帰ってふと思った。


「私は本当に中華ちまき巡りをしたいのか?」

「ビーフン東に通うのでは事足りないのか?」

と。


そこで、「巡りたい」と思うことと、「ここに通いたい」と思うことの違いを考えた。


私はうどん屋巡りとパン屋巡りとピザ屋巡りを趣味にしている。

これらの食べ物に共通して言えるのは、「知らないお店の中にまだまだ上があるんじゃないか」と思っていることだ。

つまり裏返せば、巡りたくなるのは行く先々のお店でどこか満足できない点があるということ。


一方で、私には「ナンカレーを食べるならココ」と決めているお店があるし、「ドーナツを食べるならココ」と決めているお店もある。

これらの食べ物に共通して言えるのは、「ココ以上においしいお店にはもう出会えなさそうだ。」と思っていることだ。

つまり通いたくなるのは、そのお店が自分の中で頂点に君臨しているということ。

(偉そう、、?)


どちらも食べ物としては同じくらい好きなのだけど。


で、今回のビーフン東の中華ちまきは間違いなく「通いたくなるタイプ」の方だった。


「もうこれ以上おいしいちまきには出会えない」と思った。


・・・


最近読んだ本に「マチネの終わりに」という恋愛小説があった。

その物語の主人公の男女は四十代。

様々な恋愛を経て出会った二人は、お互いにお互いのことを「もう他の人を同じようには愛せない」と言っている。

そしてそのことを本文中では、

もうこんなふうに他の誰かを愛せないという十代少年のような瑞々しさは、四十代故の、むしろ無知とは真逆の静かな諦念ともとれる。

と表現している。

私はこのシーンに衝撃を受けた。


・・・


ちまきの話に戻そう。

私がちまきを食べるときに「ちまき屋巡り」をするのではなく、「ビーフン東に通いたい」と思った理由は、きっと「もう他のちまきを同じようには愛せない」と思ったからだ。

(愛が重すぎる、、)

でも私は他のお店を知らない無知なだけだからこう考えるのではない。

私は「無知とは真逆の静かな諦念」を抱いているのだ。

つまり、「ここの中華ちまきには誰も敵わない」と悟ったのだ。


たしかに私はこの世の全てのちまきを食べ尽くしたわけではないから無知かもしれない。

しかし「バーミヤンのちまき」や「本場台湾のちまき」なら食べた経験はある。

それらと比べた上で、私は「ビーフン東のちまきが一番おいしい」と感じたのだ。

(いや、比較対象少なくない?)


「静かな諦念」っていうと、

「あきらめたらそこで試合終了ですよ?」とか言われそうだけど、それでもいい。


私はこの「ビーフン東の中華ちまき」に身を埋めることが正しい選択だと信じているから。



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