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ゆるとも初心者クラブ

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【note初心者さんのための共同運営マガジンです】「創作を続けること」と「交流を楽しむこと」を目的に活動をしていました🍀 活動当時は「noteを初めて1年未満」、もしくは「not…
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2024年7月の記事一覧

【短編小説】 春

 春はいつだって、物憂く気だるく、感覚という感覚を甘く鈍らせる。あの頃は、春がいつか終わ…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
37

【短編小説】夏の終わり、道の始まり

 心地よい夢をみていた。  胸につかえていたなにかが、すっきりと洗い流されるような、ほっ…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
13

【短編小説】カルチャーセンター

 弁蔵のやつは、丘の上のカルチャーセンターとやらに行き出してから、妙に色気づいて癪に障る…

秋ノ宮 陽菜
6か月前
24

【短編小説・二話完結】橘めるるの憂鬱・2

 今日は週に一度の本社当番の日である。本社に提出する書類を持って車で向かい、持って帰るも…

秋ノ宮 陽菜
6か月前
20

【短編小説・二話完結】橘めるるの憂鬱・1

 橘めるるは憂鬱である。朝六時半に目覚ましで起きると、いつものように男友達からラインが入…

秋ノ宮 陽菜
6か月前
27

【(やや)短編小説】マリッジブルー・後編

 この場で連絡先を交換し、ふたりは急速に仲良くなった。そしてある冬の日、みちるはいろいろ…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
18

【(やや)短編小説】マリッジブルー・前編

 五月の曇りなき空に、色とりどりの花が舞う。ここは瀬戸内のガーデンフレンチレストラン。「海の見える」が謳い文句のこの店からは、確かに、きらきらと日光の反射する穏やかな海が見える。 「みちるちゃん、貴文さん、おめでとう!」 「おめでとう!」  純白のウエディングドレスに身を包んだみちるは、両サイドで花をふりまいてくれている友人たちに、はにかみながら笑顔を向ける。  この日のために生きてきたのだ、とみちるは思う。そう、この日がたぶん頂点だ。あとはきっと、下る一方。隣にいる貴

【短編小説】命ある限り踊り続ける勇気と希望

 さっきまでうっとうしいぐらいに強い日差しが降り注いでいたのに、急に暗い雲が立ち込めてき…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
23

2種類の安心感

日々の生活の中で、私たちはしばしば「安心感」を求めます。しかし、この「安心感」には異なる…

桃
6か月前
12

【短編小説】ハーモニー

 和江お姉さんは相対音感というやつをもっているようだ。 お姉さんはどんな音階に対しても、…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
21

【(わりと)短編小説】ほらふきかっちゃん・6(最終話)

 かっちゃんが死んだのは、それから二週間と経たない頃だった。かっちゃんは土間にうつ伏せに…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
21

【(わりと)短編小説】ほらふきかっちゃん・5

 事件が起こったのはそのあとだった。かっちゃんより少し前に男湯を出た僕は、フルーツ牛乳を…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
23

【(わりと)短編小説】ほらふきかっちゃん・4

 そこへ母ちゃんが入ってきた。 「勝治、あんた、悠馬を連れて銭湯へ行ってきてくれない?」 …

秋ノ宮 陽菜
7か月前
20

【(わりと)短編小説】ほらふきかっちゃん・3

 そんな会話をしているうちにも、トタン屋根にはばちばちと雨が当たり、雨受けの茶碗たちはりろりん、からりんと楽し気な音を出している。 「ねえ、なんでお茶碗たくさん置いてるの? 土間なのに」 「土間だって立派な床さ。水浸しじゃかわいそうやろう。それにな」 「うん」 「夜中に化け猫が水を飲みにくるんよ」 「ほんと? じゃあ僕夜中までいるよ」  かっちゃんはガオと両手を出して 「さらわれるよ。子供はな」  と言った。 「じゃあおとなになったら来るよ」 「ああ、おとなになったらおい