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【(わりと)短編小説】ほらふきかっちゃん・3
そんな会話をしているうちにも、トタン屋根にはばちばちと雨が当たり、雨受けの茶碗たちはりろりん、からりんと楽し気な音を出している。
「ねえ、なんでお茶碗たくさん置いてるの? 土間なのに」
「土間だって立派な床さ。水浸しじゃかわいそうやろう。それにな」
「うん」
「夜中に化け猫が水を飲みにくるんよ」
「ほんと? じゃあ僕夜中までいるよ」
かっちゃんはガオと両手を出して
「さらわれるよ。子供はな」
と言った。
「じゃあおとなになったら来るよ」
「ああ、おとなになったらおいで」
かっちゃんはにやにやと笑った。
「ねえ、女のひとはおばあさんになったらどこに行くの?」
僕はおじいさんランドの話を蒸し返した。
「女は歳をとっても姫やからな。おばあさんランドは存在しない」
ぴんから、ぽんから、りんから、ぴしゃん。
「えー。なんかずるいや」
僕は体育座りに膝を抱いた。
「そんなら悠馬は、歳をとっても王子様の気分でいたらいい」
「そしたらおじいさんランドに連れていかれない?」
「ああ」
かっちゃんが頷いたので、僕は心底安心した。