マガジンのカバー画像

記憶のカケラ

210
書き溜めていた文章を少しづつUPしていきます
運営しているクリエイター

2021年3月の記事一覧

短編小説:手袋

今日はことのほか冷え込む。 私は寒がりで冬はいつもずっと手袋をしていた。 叱られない様に…

短編小説:カテゴライズ

「何やってんだよ。納豆は先によくかき混ぜるんだよ!タレ入れる前に。常識だから」 食堂で声…

短編小説:門出のお守り

あ、同じペンだ。 彼が書類に署名しているのを見て気づいた。 今年から新入社員の彼。 きっ…

短編小説:恋とも呼べない

君が週末は自転車に乗ってると同期に話していたのを休憩室でたまたま聞き、私は自転車を買った…

短編小説:コンプレックス

「いつも爪隠してるよね、なんで?」 彼に聞かれた。 慌てて私はさらに爪を握り込んだ。 手…

短編小説:好きな人

「大丈夫?」 たいして心配してもいない人ほどそう聞く気がする。 昨日から一体何人に聞かれて…

短編小説:奴隷

終わらない。 終電で果たして帰れるだろうか。 考えても仕方ないので兎に角進めるしかない。 部下は育休明けだ。 分かっている、仕方がない事くらい。 でも、良く休む。 時短勤務。残業はできない。働き方改革、当然だ。 でも、その分仕事の量が減る訳ではない。 つまりその分、誰かがカバーするのだ。 誰が? 管理職が、だ。 管理職とは便利な言葉だ。 残業代も出ない。 すべての責任を負わせられる。 会社における真の奴隷は間違いなく管理職だ。 「すみません、子供が熱で・・」 部下の休み

短編小説:ちがう道

「転勤、決まった」 「どこ?」 今日は私のお祝いだったはずだ。 コンペで勝ち取った初プロジ…

短編小説:通勤電車

前から3両目、2つ目のドアを入って右の2つ目のつり革。 そこが彼の定位置だった。 最初に意…

短編小説:最後の晩餐

「来週、出て行くね」 ベッドに入り、彼に背を向けたままそう言った。 「うん」 彼はただそ…