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短編小説&ショートショートあれこれ

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創作作品。たまに身近なモデルがいたり、身近な出来事が混ざったり混ざらなかったり。
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記事一覧

ゆびきり【ショートショート】

「おおい、ちょっと。誰か、おいちょっと!」 休日の朝のまどろみは、義父の呼び声でいきなり…

律子
1年前
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こがねいろの願い(金)/【ショートショート】

※企画「あなたとぴりか」の参加作です。 前半は詩乃さんの書かれたお題作品、 後半が私の書い…

律子
1年前
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【ピリカ文庫】あの日みつけた君は【ショートショート】

夢を見ているのかと思った。 9月半ばを過ぎたとは言え、晴れた日の昼間はまだ陽射しがそれなり…

律子
2年前
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刺したのは私【ショートショート/夏ピリカグランプリ】

ただの気のせいだなんて、どうしたって思えない。 バス停からずっと誰かに後を尾けられている…

律子
2年前
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気分は焼きそば【ショートショート】

4人がこうして顔を合わせるのは、もういつぶりのことだろう。 顔を合わせると言っても、あくま…

律子
2年前
94

3月の雪【ショートショート】

この冬の雪は特別だ。 出だしの12月はかなり控えめで、やっぱり温暖化だねなんて呑気に構えて…

律子
2年前
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残りワインがゆらめくせいで【ショートショート】

このボトルを開けたのは、もう何週間前のことだろう。 あの日はいつも通り2人で映画を観て食事をし、その後ちょっとだけ私の部屋で飲み直そうということになった。 「就職おめでとう」グラスを軽く傾けながら、屈託のない笑顔で君は言う。 「ありがとう。でもめでたいかどうかは、正直まだわからないけどね。すごく厳しいお局様が仕切ってる職場かもしれないし」 「またそういうひねくれたことを言う。あなたなら大丈夫。のん気さと図太さは俺が保証するよ」 「ああそれはどうも。って、全然嬉しくないし」

その灯りはピンク【ショートショート/冬ピリカグランプリ】

年末近いこの季節なら、出勤時刻の16時には間もなく夕闇のカーテンが下りてくる。 パート先は…

律子
2年前
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天色ストーリー⑧❨そしてわりと明るい空·最終話❩【連載小説】

この経歴には、理由があるんです。決して、何事も続かないタイプではありません。 美彌子のそ…

律子
3年前
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天色ストーリー⑦❨明るい雲と暗い雲❩【連載小説】

短い間に決断して入学した専門学校で、同級生として出会った彼女達と自分との違いばかりが気に…

律子
3年前
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天色ストーリー⑥❨雲は流れて❩【連載小説】

美彌子の勤務先では、欠員の補填や引き継ぎ業務の都合から、退職の希望は2か月前に申し出るの…

律子
3年前
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天色ストーリー⑤❨空はまだ見えない❩【連載小説】

頬にあたる風が、少し柔らかくなったと感じる陽気の頃。 合格者一覧の掲示板に、自分の受験番…

律子
3年前
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天色ストーリー④❨この先の空が見えたら❩【連載小説】

美彌子の母は、不機嫌だった。 日曜日に行われた高校の二者面談に、珍しく母に代わって出席し…

律子
3年前
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サンドイッチ❨日曜の朝編❩【ショートショート】

昨夜のお母さんには、ムカついた。 煮物の人参に手をつけない僕に気づいて「すごく甘いから」って言ったんだ。 「甘い」っていうのはさ、チョコレートとかアイスクリームとか、そういう味のことだと思う。 もしかして本当かなと思って、食べてみたら…なんだ!ただの普通の人参じゃん。 せめて初めに、「野菜にしては」って付けるべきだ。じゃなきゃ、ずるだよ。小学生をナメるなよ。 だから今朝は、本当はとっくに目が覚めてるのにベッドから起きないで、わざとぐずぐずしているんだ。少しくらい心配させた