残りワインがゆらめくせいで【ショートショート】
このボトルを開けたのは、もう何週間前のことだろう。
あの日はいつも通り2人で映画を観て食事をし、その後ちょっとだけ私の部屋で飲み直そうということになった。
「就職おめでとう」グラスを軽く傾けながら、屈託のない笑顔で君は言う。
「ありがとう。でもめでたいかどうかは、正直まだわからないけどね。すごく厳しいお局様が仕切ってる職場かもしれないし」
「またそういうひねくれたことを言う。あなたなら大丈夫。のん気さと図太さは俺が保証するよ」
「ああそれはどうも。って、全然嬉しくないし」