それいいね!リアルではなかなか、言葉にできなくて。
おもいがけず、酸っぱいものを口にして
それはもともと酸っぱい食べ物だったのに、
どこかで甘いものだという思いが先走って
いたので、その酸っぱささに新鮮なものを
感じた。
ちょっとそんな経験をこの間した。
久しぶりに会って会話した方がいて。
その方とは観てるドラマや、読んでる本とか
あれおかしいよね、あれはできないよね
みたいなところが同じなものが多いので
すこやかに時間は、過ぎていった。
職業は美容師さんだ。
わたしはほとんど身なりがざっく
ばらんなので。
いつも簡単な手入れでオッケーな髪型に
してくれたりして助かっている。
そしてその日を終えたある日。
あとあと知ったことだから、いまとなっては、
どうしようもないけれど。
どうもその人は、あることをほめてほしかった
のだと、その人をよく知る人から教えて
もらった。
わたしは何度もその会話の中で機会があった
らしいのに、スルーしつづけてじゃあねって
やってしまったみたいなのだ。
その人の着ていたシャツはよくみるとそれは
さりげないローズ柄で、とてもすてきだった。
いつも似合うものを着ているので殊更にほめる
のもどうかとおもって、触れないでいた。
あまりわたしは誉め上手じゃないところも
あって。
なんかゴマをすってるみたいに思われるのも
いやで。
小さい頃からいいとされる行いがあまり
できない。
率先してなにかをする。
片づけるとか手伝うとか。
点数を稼いでるように極力みられないように
していたら、気の利かない子供として成長
してしまった。
根回しっていうのもやったことがないし。
頼まれてもやれなくて、関係性がわるく
なったこともあるけど。
それはさておき。
彼の似合っていたローズ柄のシャツ。
それ、いいですねって言ったほうが
よかったんだなって。
後で友人に報告したら、え~言わなかったの?
残念みたいな顔をしたので、またなにか、
間に合わなかったんだなって思った。
でも。
その人がおよそ、ほめられたい風情の人では
なかったから、とてもその感情が新鮮で、
あらたなアングルから、その人をキャッチ
したような気分だった。
そんな日の夜、ある文章が目にとまる。
アリス・マンローの小説『ジュリエット』を
読んだ詩人の蜂飼耳さんの言葉だった。
その小説は人生そのもののようだと。
なぜなら分岐点となる出来事がまるで
実人生で起こった時のように、
<自然な手つき>で仕組まれ描かれている。
そう書かれていた。
そうなのかもしれないと思う。
人の分岐点って振り返った時にしか
わからないものだし。
でもそれがまるで分岐点の顔をしていない
ことの方が多いから、ほんとうに、
おっかなくてやっかいなんだけれど。
思えば、偶然過ぎる出会いだったのに、
のちのち忘れられない人や。
言わなくてもいいことを言った言葉が、
その人をずっと傷つけていたと
気づいたり。
行けたのに行けなかった場所が、今も心残りに
なっていたり。
行っとけばよかった、言えばよかったって
いつも後から気づくんだなって思う。
人の感情のみえない襞に触れたような
そんな一日だった。
もう大人になってからずいぶん経つけれど。
それいいねとか、似合ってるねとかって
リアルではなかなか言葉にできなくて。
(突然ですが、どうでもいい話ですが今日はnoteを
立って書いてみました。視点が変わるかなって、自
分で実験してみました)
画像はぱくたそさんから拝借しました素敵な作品を
ありがとうございました。
駐車場 星がわらった そんな気がして
もういちど 空を見上げて ことばをのんで