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夏へ短い手紙を書くとしたなら。

春も秋も冬も。
気がつくと季節はそこにいて。
皮膚感覚として好きとか嫌いとか
色々言ってしまうのが人だけど。

この夏はほんとうに嫌われていて。
わたしもたしかに嫌っていた。
でも夏が終わると思うとどこか
心寂しくなってしまうのは
恒例の気持ちのグラデーションだけど。

いろいろあったね。

この夏、わたしは人に出会うのが楽しくて
しかたなかった。

むかし引きこもっていたわたしにも
教えてあげたいぐらいだ。

母の介護らしきものが生活のなかに
馴染んでやっと四カ月半。

母のショートステイは母の夏休みなのだ。

そしてささやかだけどわたしの夏休みでもある。

彼女が海辺の町の窓辺で見ている景色は
どんな色をしているのかわからないけれど。

離れている時も、プロの方々にお任せしている
安堵もありながら。今どんな景色をみているん
だろうと想いを馳せたりする。

母の留守の間はなるべく家を離れて人に会う。

すきな人に会う。
会いたくなる。

アジアンテイストのお店、真鍮のパーテー
ションにふわふわの生成りのカーテンが
ゆれている
客席に案内されて。
ガパオライスを食べながら、仕事について
これからについて話していた。

夏、ばてたよねって。
身体の不具合が自分の身体に起きるなんて
思わなかったねって笑いながら。

そして。
話題も乱反射のように飛び交ってゆく。

歩んできたよね。
こつこつだったけど、ここまでたどり  
着いたよね。
そんな気持ちになっていた。

窓辺を見てる。

夏の雲ってどんなに嫌われていたって
どうどうと浮かんでる。

これでもか、これでもかというほどに。
それは半ば潔い。

こういう人がいたなら、心底嫌いには
なれないのではないか。

日差しは強いし、まぶしいのだけど。

こんなに嫌われていた夏もどこか他人事
だと思えないものがあって。

密かに夏、好きだったよって気持ちになる。

もう残暑お見舞いも過ぎようとしている頃
だったけど。

わたしは夏に手紙を書くとしたら、さんざん
ふりまわされたけど、やっぱり好きでした

そんな風に書くような気がしていた。

夏らしいもくもくした入道雲にカメラを向けるのが
照れてしまって。

夕方まで待っていた。

わたし好みの空とすこしすがれた建物が目の前にあった。


散歩しながらみつけた横浜の夕方。

なんかうまく言えないけれど。
夏に負けてしまったこともあったのだけど。
今日という夏のいちにちを迎えていること
うれしいねって思った。

すきな人におめでとうと言って。
これからもすきな世界で生き生きとしていて
ほしい、それがわたしの幸せでもあること。

そしてわたしのすきな人は今たくさん
いること。
そのことふくめて、うれしいねって
思いながらスマホのシャッターをぽちっと
押していた。

ふいに、母も。
この同じ時間の夏の夕方の空をすてきな
部屋の窓からもみているかなって思いながら。

離れていてもこの空のしたで暮らしてる。

夏、どうせまだ去りたくないんだったら、
いつまでも居ていいよって思いながら。

いつも、笑える方向を目指しています! 面白いもの書いてゆきますね😊