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最近の記事

ポッパー『40の練習曲』について ②左手の技術

全40曲を「親指の使用」と「重音の使用」の有無、そして3つの音型「分散和音」「半音階」「旋律的な順次進行」の5項目について調査を行います。 擦弦楽器を演奏する際、演奏者の左手が受け持つ最も基本的な要素は音の高さによって音型を作り出すこと(他に運指のタイミングで音価を保持すること、ヴィブラートなどがある)であるから、音型の種類の調査を通して、左手の技術を分析しました。 使用されているポジションは第1ポジションから親指ポジションまでで、第3番、第11番、第25番を除く37の曲に

    • ポッパー『40の練習曲』について①

      ①調性 調性はハ長調が最も多く7曲、次にニ長調が5曲、そしてト長調とイ長調がそれぞれ4曲とチェロの4本の開放弦と同じ調性が多い。特徴的なのがフラットが多くつく変ニ長調(35,39番)、変ト長調(30番)、変ロ短調(3番)の曲が収録されていることです。 ②拍子 拍子は4/4拍子が21曲、6/8拍子が8曲、3/4拍子が7曲 、2/4拍子が2曲、3/8拍子が1曲、2/2拍子が1曲ありました。 ③速度記号 速度記号は“Andante”が含まれているのが12曲、Andantinoが

      • チェリストの歴史 ドレスデン楽派について

        ドレスデン楽派はチェロの演奏技法を体系的にまとめ、教育的価値のある教則本、練習 曲を多数出版したユストゥス・ヨハン・フリードリヒ・ドッツァウアー Justus Johann Friedrich Dotzauer (1783-1860) とフリードリヒ・アウグスト・クンマー Friedrich August Kummer(1707-1879)を中心としたチェロ奏法の流派の一つである。 ドレスデン楽派の源流はベルンハルト・ロンベルク Bernhard Romberg (1767-

        • 弦楽器のヴィブラートについて考える 〜かけ方の種類や組み合わせ方〜

          ヴィブラートを形成するのは ①揺れの幅 ②揺れの速さ の2つの要素である。 ①揺れの幅 揺れが小さい⇄揺れが大きい ②揺れの速さ 揺れがゆっくり⇄揺れが速い この2つの要素の組み合わせで多彩なバリエーションのヴィブラートを作ることができる。例えば… ・揺れが大きく、速い ・揺れが小さく、ゆっくり ・揺れが大きく、ゆっくり ・揺れが小さく、速い …など。 言葉で表してしまうと4つに分類されてしまうが、実際には無限といっていいほどのヴァリエーションがあるだろう

        ポッパー『40の練習曲』について ②左手の技術

          作曲家と演奏家① ブルックナーとチェリスト、D.ポッパー

           19世紀後半を代表するチェロの名演奏家で、チェロの魅力的な小品や、難しいが非常に役に立つ「40の練習曲」を作曲したダヴィド・ポッパーは、同時代のロマン派の作曲家にも大きな影響を与えていたのをご存知でしょうか?  今日はポッパーと交響曲の大家、アントン・ブルックナーのエピソードについて書きたいと思います。  ポッパーは1868年から1873年までウィーンフィルの首席奏者でした。当時のウィーンフィルは自治のようなシステムを採っており、団員が指揮者や曲目について意見を言う

          作曲家と演奏家① ブルックナーとチェリスト、D.ポッパー

          チェロのエンドピンは「ダサい」ものだった? エンドピンの歴史

           エンドピンは現在のチェリストに欠かすことのできない部品の1つ。多くは金属製、カーボンで尖っている先端を床に刺して使用するものです。(ホールによっては床の損傷を防ぐため刺すことを禁止しているところもあります。) エンドピンで楽器の下部を支えることによりチェリストは上下自在にポジション、体重移動ができるようになっています。床への刺し方が甘かったり、先端部分がすり減っていたりすると、体重をかけた瞬間ズルッ!!!!と滑ってしまい、これが本番やオーケストラの中など大勢の前で起こると非

          チェロのエンドピンは「ダサい」ものだった? エンドピンの歴史

          チェロの練習曲: ドッツァウアー 113の練習曲について①

           ドッツァウアーの「113の練習曲」はチェロを学習する多くの人に使われてきました。(スズキ教本のような馴染みのある旋律や曲とは違い、何が面白いのかよく分からないと感じつつダラダラ譜読みをしていた記憶があります…。)この曲集、実はドッツァウアー自身が作ったものではありません。ドッツァウアーが作曲した種々の練習曲を弟子のクリンゲンベルクが収集し、並べたものです。(他人が作成したなら113という微妙な数字にも納得…。)  この曲集の中のいくつかの曲はシュレーダー「170の練習曲集

          チェロの練習曲: ドッツァウアー 113の練習曲について①

          チェリスト David Popperの生涯 ②

          ウィーン時代(1868〜1873)  1868年、指揮者ハンス・フォン・ビューローの勧めでポッパーはウィーンの宮廷オペラ・オーケストラの歴代で最も若い25歳の首席奏者になりました。彼はウィーンフィル・ハーモニーの演奏会や、コンサートマスターのヨゼフ・ヘルメスベルガー らとの「ヘルメスベルガー四重奏団」の演奏会にも参加しました。この四重奏団では1868年から1871年の4年間、1年に8回ずつ全32回の演奏会を行い、ベートーヴェンの作品が最も多く演奏されたそうです。  1872年

          チェリスト David Popperの生涯 ②

          チェリスト David Popper の生涯 ①

           世界中の多くのチェリストを苦しめているかの有名な「40の練習曲」作品73を作曲したダヴィド・ポッパーについて紹介します。  ダヴィド・ポッパー David Popper (1843-1913) は1843年にチェコ、プラハに生まれ、父親はユダヤ教会堂のカントル でした。彼は6歳でヴァイオリンを始め、12歳で「チェロを学ぶ」という条件でプラハ音楽院に入学しました。音楽院で、彼はクンマーFriedrich August Kummer(1797-1879)の弟子であったユリウス

          チェリスト David Popper の生涯 ①