ポッパー『40の練習曲』について ②左手の技術
全40曲を「親指の使用」と「重音の使用」の有無、そして3つの音型「分散和音」「半音階」「旋律的な順次進行」の5項目について調査を行います。
擦弦楽器を演奏する際、演奏者の左手が受け持つ最も基本的な要素は音の高さによって音型を作り出すこと(他に運指のタイミングで音価を保持すること、ヴィブラートなどがある)であるから、音型の種類の調査を通して、左手の技術を分析しました。
使用されているポジションは第1ポジションから親指ポジションまでで、第3番、第11番、第25番を除く37の曲に親指の使用が認められます。
複数の弦を同時に押さえる重音は、ほぼ全ての曲に登場するが、曲の終止の和音や練習曲の意図とは異なると思われるものはここでは取り扱わないことにします。この条件に合致する重音を含む練習曲は11曲ありました。3度から12度の和音が登場し、11曲全てに重音を親指ポジション上で演奏する運指の指示があります。
分散和音は40曲中33曲に認められ、この練習曲集で比重の大きい要素であることがわかります。
半音階は17の曲で認められ、そのうち親指ポジションを使用するものは第20番、23番、24番、27番、32番、39番の6曲です。
旋律的な順次進行は35の曲で認められます。これはこの練習曲集が単なる技術の練習だけではなく音楽的な要素も含んでいることを表しています。
3つの音型全てが含まれる曲は13曲あり、その全てが親指ポジションを使用します。1つの技術の習得に従事するのではなく、複数の技術が1曲に組み込まれていることがこの練習曲集の特徴の1つであると考えられます
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