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【日本橋】 山本山ふじヱ茶房さんに行ってきた。
日本橋駅で降りて、高島屋さんの方向へ歩いていると、
ふと濃い藍色の大きな暖簾が目に入った。
【山本山ふじヱ茶房】と書いてあるそのお店は、
ガラス張りで店内が覗けるようになっていて、
"Less is More"という言葉がふいに思い浮かぶような
整然とした、和モダンな空間が広がっていた。
日本橋で用事を済ませたあと、また駅に向かって歩いていき、
そのお店に立ち寄ってみることにした。
店内は、広々としていて、カフェと店舗に分かれていた。
私が座ったテーブル席の隣には、炉釜と柄杓が置いてあり、
大きな店内にも関わらず、茶室のような非日常の空間を感じた。
私は、桜のきんつばとお抹茶をいただいた。
黒文字できんつばにさっくり切り込みを入れて、ぱくりと一口。
桜の風味があんこの甘味と交わって、なんともいえぬ上品な味わい。
口の中で味わっているうちに、甘みが口いっぱいに広がる。
桜餅もそうだが、和菓子と桜が合わさると、甘さに上品さが増すような気がするのは、日本を代表するお二方の合作だからだろうか。
春の訪れを待ち侘びる気持ちがふくらんでくる。
きんつばの最後の一切れを口に放ると、口の中が優しい甘みに包まれる。
静かな幸福感で満たされていく。
今度はお抹茶腕に手をかける。
土の質感がほどよく残っていて、大地にふりそそぐ陽のぬくもりを感じる。
深さもたっぷり。黄みがかった茶碗に抹茶の緑がよく映える。
お抹茶は山本山の「天下一」。ゆっくりと口に滑らせる。
なめらかで、ほんのり暖かい抹茶が、心地よい。
口の中の甘みを抹茶がしっとりと包み込んでいく。
気持ちのいい非日常を愛おしむ。
さあ、気分が良くなって、リラックスしてきたところで、
ふいに鼻の中の、一番心地いいツボを抜けるような、
お茶を焙煎する香ばしい匂いがしてきた。
体の中の悪い成分を染み出してくれるような、
部屋の中の不浄なものを追い出してくれるような。
二つの相反するものが、同時に含まれているような。
やわらかさと刺激。苦味と甘味。不浄と清浄。
そんな全てを包摂している、森のような、香り。
でも、森の香りではなくて、より生き生きとした細胞みたいな。
お茶を煎る香りを嗅ぐと、なんだか施術を受けた後みたいに
体も心もすっかり解きほぐされている。
そして私は確信する。
「ああ、お茶を煎る香りを部屋中に充満させたい。」
そんなこんなで、ふじヱ茶房で素敵な週末の一時を過ごした。
次はどこの和菓子屋さんに行こうかしら。
そして無印さん、部屋のアロマにお茶の香りを、ぜひとも。。。